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 周囲を捜索した結果。見つけた、ベビードラゴンの集団。
 その数5匹。目が合った時点で奴等のターゲットとなった。
 今、冒険者としての初仕事が始まった。

第137話 唸れ、風華○○○ <<雄二>>

 いざ、戦闘が始まって誤算が一つ。
 火を噴いた直後に剣を開いた口に突き刺す。これが奴等を倒すセオリーだ。
 そして、俺が持つ武器は刃渡り20cmもない風華。

「無理だってユージ!! フォローに回れ!!」
 そう、突き刺すにしても風華では内部まで届かないのだ。
「ちくしょう!! ジート、剣貸せよ!!」
「バカ!! 俺の武器がなくなるだろ!!」

「<<風華の主が命ずる、風よ、矢となりて我が敵を討て!!>>」
 トカゲ(ベビードラゴン)に全力で風の矢を撃ちこむ。

『ったく、硬いわねぇ……』
「うおっ!!」
 風の矢をものともせず、平然と火を噴き、反撃をしてくる。

 後方の一匹が火を噴こうと息を吸い込んでいるのに気付いた。
「噴くなっ!!」
 疾風で近づき、そのトカゲの頭を思いっきり踏みつける。
「おっ、いいぞ。ユージ!!」
「こんな役回り納得できるか!!」
 俺が火の囮となり、ジートが止めを刺す。自然な流れで各々の役目が決定していた。


「ちっくしょう。なんかいい手はないのか!?」
『あのねぇ、普通に攻撃すればいいじゃない……』
(あ? だってお前も見たろ? ジートの剣が弾かれるんだぞ!?)
 トカゲの吐く火から逃げ回りながら何とか風華と会話をする。

『ふぅん。あたしがあの鉄屑と等価だと? 不愉快ね……』
(おい、もしかしていけるのか?)
『たかが鉄屑にあたしが負けるわけないでしょ。ソウルウェポンを舐めないでよね』

 よし、あの鉄も弾く皮膚に勝てるみたいだし……。
「風華。確か、一本ありゃ出したり消したりできるんだよな?」
『え? そりゃ、できるけど……』
「しかも手放した2本目も手に戻ってくるんだよな?」
『そうだけど……雄二、アンタまさか!?』
 風華は俺の作戦に気付いたようだ。

「そのまさかって奴だ。行ってこい!!」
 右手に持っていた風華の一本をトカゲに向かって投げつけた。
「名付けて風華手裏剣……」

『いやぁああああああ!!!』
 風華が叫びと共に回転しながら飛んでいく。しかし、直線上にトカゲの姿はない。
 結果を言うと何者にも刺さらず、無駄に地面に突き刺さった。

『何やってるのよ。このノーコン!!』
「……次いってみよう。風華消えろ。風華でてこい」
 地面の風華が消えて、俺の手元に2本とも戻ってくる。
『普通に斬ればいいじゃない!!』
「やだよ。あの火は危ねぇからなぁ……」
『しかも、投げたんなら当てなさいよ!!』
「まぁ、気にするな。ナイフ投げなんかやったことねぇんだ。次行くぞ」
『絶対当てなさいよ!!』

「OK、OK。せーの!!」
 いやぁ、風華の叫びが俺にしか聞こえないのが残念だ。

「お前、何やってんだ?」
「ん、いや、口に刺さらんかなぁと思ってな……」
「俺……マジでやってるのがアホらしくなってきたぞ」
 何故だ。こっちはけっこう真剣に風華手裏剣を投げているぞ。

『ノーコン!! 雄二はもうノーコン!! 間違いなく!!』
(うっるせぇな!!)
 人をノーコン扱いしよってからに……。

「風華消えろ。風華でてこい」
 再度、風華手裏剣を手元に戻す。
『ね、やめようよ。アンタにあたしを投げる才能ないって』
「ほら、お前が囮やんねぇと俺が倒せねぇだろ?」
 風華とジートに責められる。
「俺だって一匹くらい倒したいぞ」
「わかった。最後の一匹任せるから今は囮をやってくれ」
「ちっ、わぁったよ」
 トカゲの周囲をスローに歩き、火を噴くように仕向ける。

『吹きそうになったら即接近して斬りつけなさい』
(ジートが狙いまくってるが?)
『一応、戦闘訓練も兼ねとかないと……遊んでるだけじゃね』
 俺は遊んだことは一度もない。すべてが真剣だったというのに……。

 目の前の一匹が大きく息を吸い込んだ。
「『 GO!! 』」
 一瞬で詰め寄り、上から風華を突き立てる。
 硬い皮膚というのが嘘のようにあっさりと突き刺さっていく。

「マジかよ……」
 俺は傷つけることができる程度だと思っていたのだ。
 まさか風華がこんな切れ味を持っていたとは……。
『言ったでしょ? あたし達を舐めないでねって』
「あ、ああ……」
 当然、脳を突き刺されたトカゲは絶命した。

「おい、ユージ!! 次だ次!! ちゃっちゃとやれ!!」
「お、おう!!」
 俺がトカゲを斬れると知ると、止め役を俺に回し、ジートはサポートに回る。
 残るは2匹。
「斬れると分かれば手加減はしねぇぞ!!」
 近くの一匹に近づくと、尻尾を切り落とす。
「お土産は忘れずにってな。ジート!!」
 切り落とした尻尾をジートに投げる。
「おう!!」
 尻尾を受け取るとジートは巾着袋に入れる。


「おい、ユージ!! ちょっとヤバイっぽい!!」
「あ?」
 振り向いたとき、トカゲの1匹がジートに向かって火を噴いていた。
 ジートを救うには距離が遠すぎる。
 そして、目を離せば尻尾を切り落とした残りの一匹に俺がやられる。
「くっそ!! いけっ風華!!」
 思いっきり風華を投げる。その直後、左の一本で足元の一匹に止めを刺す。

 火はジートを包み込む。しかし、火を噴いたトカゲは絶命している。
『いざって時は当たるのよねぇ……』
「ジート大丈夫か!?」
「まぁな。保険が効いたらしい」
 炭となってボロボロのマントの中からジートが出てくる。

「お前油断しすぎじゃねぇの?」
「ああ!? お前がそれを言うか!? お前なんか油断しっぱなしじゃねぇか!!」
 俺が油断しっぱなし? そんなことはないぞ。

「……疲れたな。 とっとと帰ろうぜ」
 くだらん言い合いなんか無意味だ。早く帰って寝たい。
「お前なんかコリンに苦しめられろ」
「俺に妙な呪いをかけるな……」
 仕事を終えた俺達はウェルズの村へ帰った。



「ユージ、仕事終了だ。とっとと帰ろうぜ」
 俺は酒場には入らず、外で待っていた。あのクソマスターと顔を合わせるのも嫌だったからだ。
「マスターの鼻明かしてやりゃいいのに……」
「うるせぇな。あの野郎の面を見るのも不愉快なんだよ」
 どうせ、もう二度と会うこともない。
「ほら、とっとと帰るんだろ? 行こうぜ」
 俺はひとりで村の出口に向かった。
「なんだ? そんなに奴隷に戻りたいのか?」
「そうじゃねぇよ!!」

 ったく、ああ言えばこう言いやがって……。
 俺達はシア村に帰るため、もと来た道を歩き出した。



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