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 現在、ババ抜き7戦目。ハマるのは分かるがやりすぎだろ……。
 3戦目からは全員がルールを完全に理解し、策略に走る。
 その嫌らしさときたら……。

第128話 団欒のとき2 <<雄二>>


 俺は智樹からカードを一枚受け取る。
 取ったカードはジョーカー。智樹の表情は一向に変わらない。
「お前、ポーカーフェイス上手すぎだろ……」
 俺がジョーカーを手に取ってもいたって無表情。
「ババ抜きの極意だからね」
 その点、俺はまったくダメだ。すぐに表情に出てしまう。

「ほい、レナ」
 俺はジョーカーを取りやすく一枚だけ上に少しずらす。
「……う〜ん」
 レナは上にずらしたカードを何の疑いもなく取っていく。
「あっ」
 その瞬間俺はニヤリと笑ってしまうし、レナは落ち込んでしまう。
 誰もがそれでレナにジョーカーが渡ったと分かってしまう。

 レナのおかげで俺常勝。ジョーカーがベルトコンベアのようにレナに流れる。
「はい、ジートさん」
「ほい」
 カードを一枚引いた時点でレナががっかりする。
 どうやらジョーカーを保持してしまったらしい。
「レナは本当に分かりやすいな……」
「アンタに言われちゃおしまいね」
 コリンが俺にツッコミながらジートからカードを引く。
「はい、これであがりね」
 揃ったカードを2枚捨ててコリンのもち札がなくなる。

「コリンさんって運がいいね」
「ったく、無駄に運だけいいんだよな」
 智樹の褒め言葉がジートによって悪口に変わる。
「…………」
 コリンが冷ややかな目でジートを見る。危険信号だ。

「ジート。お前はこの家を破壊するつもりか?」
「悪い、失言だった。すまんコリン」
 なんかバチバチいってるコリンをジートが何とか鎮める。
 ジートの気分を代弁するなら、海神様を鎮める村人の気分だ。
 このまま魔法が発動していたら俺達もただでは済まなかっただろう。
「コリン、お前も俺達の家で魔法は発動するな」
「別に本気じゃないわ」
 んなこたぁ分かっとるわ。本気だったらお前を殴ってるっつうの。

「コリン。その、あれだ、そのなんたら学院ってどんなところなんだ?」
「国立魔術学院よ。魔法の才能がある人が集まる学校なの」
 才能ねぇ。コイツに魔法の才能を与えたのは何かの間違いだろ……。
「何人くらいが通ってるの?」
 智樹がエリスからカードを取りながら質問する。
「ん〜、だいたい1000人くらいかしら?」
「1000人!? そりゃ随分と規模がでけぇな」
 ちょっとした大学並じゃねぇか。
「まぁね。攻撃、防御、回復、攻撃補助、古代魔法の5つの専門学科があるし
魔法の才能さえあれば、けっこう誰でも入学できるのよ」
 国立の癖にかなりアバウトな学校のようだ。女王の適当さが分かるってもんだ。

「それって私達も入れるのかなぁ?」
 有香が呟くように言うが、俺はそんなに入りたくもなかった。
「入れるわよ。ただ、魔法の才能があればの話だけど……」
「その魔法の才能ってなんだよ?」
 さっきから何回も会話に出ているが、どんな奴が才能あるのか分からん。

「精霊とコンタクトの取れる人よ」
「それってどうやって調べるの?」
「魔水晶よ」
 エリスが会話に割り込んでくる。

「魔水晶で魔力の有無を調べるの。魔力があれば才能ありってわけ」
「エリスは才能があったんだね?」
「まぁね。力はかなり低いけどね」
 へぇ、エリスにも魔法が使えたのか……。
「雄二、早く取りなよ」
「おお、悪ぃ」
 会話に夢中でカードを取るのを忘れていた。

「で、レナはどうだったんだ?」
 隣に座るレナの結果が気になったので聞いてみた。
「私は調べたことないですよ。別に使いたくもないですから」
 レナが2枚のカードを捨てる。
「クェードまで行かないと調べられませんし……」
 村人として生きる以上、そこまでして調べる必要もないってことか……。

「それなのにコイツは荷支度までしてクェード行っちまったんだよ」
 ジートは呆れたようにコリンを親指で指差しながら言う。
「え? 才能あるかどうかも分からないのに?」
 あ、そうか。そういうことになるな。
 智樹のセリフを聞いて俺はようやく理解できた。
 コリンも見かけによらず相当暴走してんな……。
「私は絶対才能があったからね」
「す、凄い自信だね……」
 まったくだ。俺ならそんな不安定な300kmの旅なんてパスだ。
 才能なかったら戻ってこなきゃなんねぇなんて話にならん。

「あ、私もあがり」
 有香が2枚捨ててエリスにカードを渡す。
「でもさ、アンタ達は才能ないんじゃないの?」
「ま、そうだろうな」
 異世界の人間に魔力があるわけねぇからな。

「どうしてよ。やってみないと分からないじゃない」
「ま、そうだけどな」
 智樹からカードを引いて2枚捨てる。
「ほい、レナ」
 最後の一枚を渡して俺もあがりだ。

「ん〜、意外と難しいですねぇ」
 レナは表情でばれてしまうのでババ抜きに向いていない。
「レナ、一回混ぜろ」
「はい」
 つたない手つきでカードをシャッフルする。
「で、広げてから、こっち向いてろ」
「あ、バカ。余計な事言うな!」
 これでジートにレナの表情が読めなくなった。

「札が見えませんけど……」
「それでいいんだよ。レナは見ない方がいい」
 擬似ポーカーフェイスだ。いっそのこと見れなくした方がいい。

「くっ」
「あっ」
 顔をしかめるジートと笑顔のレナ。
 レナの手札からはジョーカーが消えていた。

「ほれ、エリス」
「ん〜……これっ」
「ちっ」
 ジョーカーを免れたエリスは嬉しそうだ。
 一周したらまた引く羽目になるんだけどな……。

「あ、僕もあがりだ」
 智樹がレナに最後の一枚を渡す。
「私もあがりです」
 智樹の渡したカードでペアをそろえてレナがあがる。
 残るカードは5枚。ジート3枚でエリスが2枚だ。

 ジートは背後で十分にシャッフルしてからエリスにカードを広げる。
「さぁ、引きな」
「……ちょっと待って。考えるから」
 考えるも何も適当に混ぜてんだから分かるわけねぇだろ……。

「これよっ!」
 右端のカードをさっと引く。
 一瞬、場がシーンと静まる。

「やっりぃ!!」
 エリスが指をパチンと鳴らして喜ぶ。
「んだよ。負けかよ……」
 この時点でジョーカーが引かれなかったら負けなのだ。
 エリスの最後のカードをもらってジョーカーが残ってゲーム終了だ。

「他の遊びをやらない?」
 ババ抜き常勝のコリンがゲームのチェンジを申し出た。
「別にいいがルールを覚えなおしだぞ?」
 一番簡単なルールなのがババ抜きなのだ。
「いいわよ。やりながら覚えることができるし……」
 エリスもそれに賛同する。
「確かにちょっと飽きてきたなぁ」
「このマークも使ってみたいですしね」
 リオラート組は全員賛成のようだ。

「なんにする?」
 智樹が聞いてくる。……俺が聞きてぇよ。
「七並べ……どうかな? 簡単だし」
 七並べか……。この俺にそのゲームを挑むとは有香も無謀だな……。
「じゃ、ルール説明するぞ〜」
 俺はリオラート組に七並べのルール説明を始めた。
 だが、その説明は途中で智樹とバトンタッチすることになった。



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