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 家中から椅子をかき集めて昼食パーティだ。
 レナもやりがいがあると言って喜んで作ってくれた。
 有香とエリスが手伝って7人分の昼食が出来上がる。

第127話 団欒のとき1 <<雄二>>


「と、いうわけで、コイツがコリン・クリークだ」
 今まであったことを簡単に説明し、コリンの紹介をする。
「け、結婚……」
「へぇ、面白いことやってんのね」
 有香は唖然とし、エリスは本当に面白そうといった表情でのたまった。
 どこが面白いか!! こっちは必死だったっつうの!!

「攻撃魔法科の主席……凄いわけだよ」
 智樹は決闘のときの魔法の威力に納得がいったようだ。
「コリンさんは本当に凄いんですよ」
「レナ姉さん。私にさん付けしなくてもいいよぉ」
 一応レナは俺の1つ年上だ。コリンは同い年。
 同じ村で育ったレナとコリンは姉妹のように仲がよかった。

「ま、俺の娘だからな」
 ジートはさも当然と言わんばかりに主張した。
「そのわりにその娘に魔法くらったりしまくってるけどな」
 あれを普通の親子とは言えない。
 俺はその点につっこまずにはいられなかった。
「うるせぇよ。ありゃ親子のふれあいって奴だ」
 壮絶なコミュニケーションだった……。

「雄二君。それで……結婚の話はどうなったの?」
「ん、ご破算。当たり前だろ?」
「…そう」
 有香が何故かホッとした様に見えた。

「私がこんな奴と結婚するわけないでしょ?」
「へいへい、もうそりゃ聞き飽きたぞ」
 コリンが俺を拒否するのは一向に構わない。だから何回言われてもなんとも思わない。
「そうですか? 私はユージさんとなら別にいいですけど」

「「「 ………… 」」」

 時が止まった。いや、実際に止まったわけじゃないが……。
 レナの発言により、無言、無音の空間が出来上がった。

「は、はは。そ、そりゃ光栄だな」
「はい、私も光栄です」
 レナは社交辞令でもなんでもなく、本心で言っているようだ。
 表情もいつも通りで、自分が時を止めた原因だなんて微塵も思っちゃいない。

「……あ〜、そうだ。エリス、旅はどうだった? 楽しかったか?」
「え? あ、そうよ!! アンタ適当に食事頼んでんじゃないわよ!!」
 急な話題変更に戸惑ったエリスだったが、何とか合わせてくれた。
「俺、ぜんぜん料理のこと知らねぇからなぁ」
「それでもアレはやりすぎでしょ!!」
 そんなこと言われてもマジで適当なんだから仕方ねぇだろうが……。
 話題の変更に成功したからよかったが……。

「まぁ、楽しかったからいいじゃない」
「ユカは甘すぎる!! 死ぬかと思ったわよ!!」
 有香が俺のフォローをしてくれたがエリスには効かなかった。
 でも、エリスが本気で怒ってないことはその口調から分かった。
 ぜんぜん厳しくない、ただのツッコミのような話し方。

「そっか。俺のやったことも無駄じゃなかったんだな」
「ふん、礼だけは言っとくわ」
 そっぽ向いて礼を言う奴があるか…と言おうと思ったんだが
 エリスの顔が赤くなっていたので、その気持ちは十分に伝わった。


 昼食を食べ終わり、全員が寛いでいたとき、妙案が浮かんだ。
「よし、せっかく集まったんだ。ちょっと遊ぼうぜ」
「遊ぶって言っても何をするのよ?」
 コリンが即座に聞いてきた。
 俺は暇潰しのために遊び道具も持ってきていた。それを今使おう。
「ああ、ちょっと待ってろ」

 一旦部屋に戻り、鞄の中からそれを持ってリビングに戻る。
「トランプ?」
 智樹が俺の手にあるトランプを見て聞いてくる。
「ああ、ババ抜きなら全員理解できるだろ……」
 あのルールを理解できない奴はいないであろう、と思いたい。
 
「これは俺の故郷の札遊びだ。智樹、ルール説明頼む」
 ジート親子にばれないように故郷とだけ言っておいた。
「え、僕? 仕方ないなぁ。ジョーカー貸して」
 智樹に言われてカードの中からジョーカーを探し、智樹に渡す。

「このカードを最後まで持ってたら負けだよ。
まず最初に同じ数字の札を2枚1組で捨てていくんだ。
そして隣の人のカードを1枚順々に取って同じ数字の札を1組を捨てる。
どんどんカードが減っていってなくなったらあがり。最後までこれをもってたら負けってわけ」

「「 ………… 」」

「分かりにくかった……かな?」
 いや、充分過ぎるほど分かりやすいぞ。
 俺にはこんなに分かりやすい説明はできん。
「なるほどね……。私はだいたい理解できたわ」
 コリンがだいたいのルールを掴めたようだ。
「私もなんとなくですけど」
 レナもなかなか理解力があるらしい、エリスとジートは少々頭を捻っていた。
「ま、まぁやりながら説明するよ。雄二、配って」
「おう」
 一枚ずつ配っていく。誰もカードを見ない。
 俺は一枚一枚見ていく派だが全員一気に見る派のようだ。

「OK。始めんぞ〜」
 さて、ここで席の位置を説明しておかねばなるまい。
 俺から時計回りで智樹、エリス、有香、コリン、ジート、レナの順だ。
 この席順でいくと俺は智樹からカードを取り、レナにカードを取らせることになる。
「まず、最初に同じ数字の札を2枚1組で捨てていって」
 智樹が見本を見せるように3のペアを捨てる。
「この、これとかこれって何?」
 エリスがカードを見て、机に指で文字を書く。絵札のことか……。

「数字の代わりの記号よ。これが11でこれが12、これが13」
「へぇ〜」
 有香が捨てられたカードで説明する。ちったぁ仲良くなったみたいだな……。

「このマークは、なんでしょう?」
「ああ、そりゃ別の遊びで使うんだ。いろいろ遊び方があるんだよ」
 会話を交わしながらペアのトランプを捨てていく。


「エリス。有香さんの札から一枚引いて」
 有香がエリスに向かって扇状にカードを広げて見せる。
 渋々といった感じで有香からカードを取る。
「同じ数字が揃った?」
「揃った……。あ、それを捨てていくわけね」
 理解できたようだ。それが理解できればルールの100%が理解できたに等しい。
「そ。それで全部なくなりゃお前の勝ちだ」
「なるほどね〜」
 そう言ってペアになったカードを捨てる。

「次は私がトモキに選ばせるのね」
「そういうこと」
 智樹がエリスからカードを引く。
「で、俺の番ってな感じで何周もしてりゃどんどんなくなっていくだろ?」
「ああ、それでさっきのを最後に持ってたら負けか……」
 ジートがやっと納得いったように何度も頷く。
「よし、全員理解できたな。再開するぞ」
 俺はレナにカードを広げる。
「誰が持ってるのか……ドキドキしますね」

 このババ抜きは運の勝負じゃない。心理戦なんだよ……。
 リオラート人がこのゲームの嫌らしさや恐ろしさに気付くのは数ゲーム後になる。



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