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 いきなり決闘を申し込まれた俺。
 相手はジートの娘であり、お互い未承諾の婚約者コリン。
 何故こんなことになってしまったのかというと……

第122話 八百長決闘 <<雄二>>


「おい、ジートどういうことだ!?」
「どうだ? 俺の娘と結婚しないか?」
 今、言うか!? 人生の重要な決定事項を今言うか!?

「断る!! いきなり言われて「はい、結婚します」と言えるか!!」
「あたしも嫌よ!! まだ結婚なんてする気ないんだから!!」
 よし、意見があった。これでこの話はご破産だ。

「俺もコイツも結婚する気ねぇってよ。これで話はお流れだな」
「コリン。なんで嫌なんだ? ユージは村の英雄だぞ?」
 無視ッスか? スルーですか?
 ジートは俺の言い分など見向きもせずにコリンの説得にかかっていた。

「英雄でも何でも嫌なものは嫌なの!!」
 頑なに拒否の姿勢をとるコリン。頑張れコリン。それいけコリン。
 俺は完全にコリン派に回った。応援するぞ!! この話をぶっ壊せ。

「あたしがなんで帰ってきたか教えてあげようか? このふざけた手紙に抗議する為よ!!」
 ジートに便箋を投げつける。
「なにが、結婚相手が見つかったぞ。よ!! 大きなお世話よ!!」
 もう、なんか……既に俺の出る幕はないな。
 話の内容から察するにジートが勝手に俺をコリンに紹介していたようだ。
 しかも結婚相手として。
 軽くジートに殺意が芽生えたが、今のコリンには敵わない。

「じゃあなんで帰ってきたんだ? 無視すりゃいいじゃねぇか」
「……長期休暇だったからよ」
 ヤバイ。ジートの一言によって攻勢だった勢いが消えた。
「長期休暇ねぇ。今まで一度も帰ってきたことねぇのになぁ」
「…………」
「お前も会いたかったんだろ? 興味あったんだろ?」
 敗色濃厚だ。俺が援護せねばなるまい。

「俺の面を見ることなんか抗議のついでだろ」
「そ、そうよ!! ついでに見てやろうと思っただけよ!!」
 反撃の機会を与えてみた。これで復活するといいが。
「ちっ」
 ジートが舌打ちをして俺を睨んだ。知るか。俺はコリン側だ。

「二度とこんな手紙送ってこないように直接言いに来ただけ!!」
「そうそう、結婚なんか親が決めるもんじゃねぇって」
「そうよ!!」
 さらに援護射撃を撃つ。

「いや、コリンの結婚は俺が決める。ユージに決定だ」
「俺の意思を無視して勝手に決めんな!!」
 コイツ完璧に親バカだ。
「腕っ節も強いし、ルックスもまぁまぁだ。文句ねぇだろ?」
「だから俺の話を聞け!!」
 無視ぶっちぎりで暴走するジートに俺の声は届かない。

「ちょっと待って。お父さん、確か言ってたよね?」
「あ? なにをだ?」
「あたしの結婚相手は強いやつじゃないとダメなのよね?」
「おう、ユージなら問題ないぞ」
「本当に? 私よりも?」
「当たり前じゃねぇか」
 あ、コリンの考えが分かってきた。

「つまり、あたしがコイツに勝てば、当然、結婚は無しよね?」
「…………」
 俺がコイツと戦う振りして八百長すればいいってことだ。
「そうだな。コリンに勝てんような奴じゃダメだ」
 ジートのセリフを聞いたコリンは俺の方を向いて静かに言った。
「そういうことよ……。ユージ・フジキ、貴方に決闘を申し込むわ!!」
「おう、了解だ!!」
 あとは適当に闘って負けりゃ、一件落着だ。

〜〜 回想終わり 〜〜

「と、まぁそういうことがあったわけよ」
「……有香さんがいなくて良かった」
「なんでだよ?」
 有香がいようがじゃじゃ馬がいようが関係ねぇだろ?
「別に」

「それにしても雄二。よく、こう立て続けに厄介事を持ってこれるね?」
「それは嫌味か?」
「嫌味くらい言わせてよ」
 智樹はため息をつきながら俺の隣を歩く。

「俺はな、持ってきたくて持ってきたことは一度もないぞ」
 全部向こうからやってくるだけだ。それを避けられないだけだ。
「帰ったら厄払いでも行ってきたら?」
「……考えとく」
 一瞬本気で行こうかと思ってしまった。


「よく来たわね!! 勝負よ。ユージ・フジキ!!」
「おう、ユージ。コリンにお前の実力見せてやれ」
 見せてやるとも見事な負けっぷりを。
「じゃ、雄二、怪我しない程度に頑張って」
「任せとけって」

 俺はコリンと対峙した。睨み合う二人、空気だけは本物のようだ。
「アンタを倒して結婚の話を消滅させてやるわ」
「おう、早く俺を倒せ。俺も同意見だ」
 決闘が始まる前のこの時点で俺の八百長が決定している。

「はじめっ!!」
 ジートの合図と共にコリンが距離をとる。
「<<集え、火の精霊よ。地獄の業火となりて敵を焼き尽くせ>>」
「げっ」
 コリンのかざした両手に膨大な炎が出現する。
「<<ヘルフレイム!!>>」
「ちょっと待て!! 風華!!」
 風華を呼び出して全力で炎の範囲からに逃れる。

「こ、殺す気か!?」
 くらったら死んでるっつうの!!
 その証拠に俺の立っていた位置の草は炭と化し、土が真っ黒になっていた。
「当然よ。あたしの為に死んでちょうだい。<<ファイアボール!!>>」
 今度は詠唱無しで無数の火の玉が飛んでくる。
「ちょ、ちょ、ちょっと待てって!!」
 左右に移動しながら火の玉の直撃を避けていく。
 こ、このアマ、マジで俺を殺る気かよ……。

「ちぃっ、ちょろちょろと……」
「落ち着け!! 話を聞けって!!」
「<<集え、風の精霊よ。愚かなる者に審判という名の雷を>>」
 くそっ、既に詠唱が終わっている!! 魔法が来る!!
「<<ライトニングボルト!!!>>」
 うっわ!! 光の束が俺のほうに向かってくる。
『くらったら死んじゃうわよ?』
(仕方ないわな……)
 俺は疾風で滑るように走った。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
「だからちょっと待てって言ってんだろ?」
「!!? い、いつの間に」
 俺はコリンの背後に回ってコリンの肩をポンッと叩いたのである。
 もう片方の手でコリンの背中に風華の刃を当てる。

「勝負あり!! ユージの勝ちだ!!」
 こうして勝負は俺の勝ちで終わった。

「いやぁ、危なかった……」
「勝ってどうするんだよ!!!」
 智樹が凄い勢いで俺に迫ってくる。
「アレをくらえってのかよ!?」
 死ぬっつうの!! マジで逝っちまうっつうの!!
「でも勝つことはないでしょ!?」
 ……そりゃ勢いって奴だ。思わずやっちまったんだよ。
 背中がら空きだもんよ。

「…………」
 じっと俺を睨むコリン。
「…………」
 やっちまった俺。

「ちょっとアンタ。なに勝ってんのよ!?」
「仕方ねぇだろ!? お前、もっと手を抜けよ!!」
 ジートに聞こえないように小声で口喧嘩をする。
「だいたいなぁ、アレはねぇだろ!? 殺る気満々じゃねぇか!!」
「……かすって倒れるくらいの演出はしなさいよ!!」
 地面が焦げるほどの業火。かすっただけで全身麻痺確定の雷。
 かすっても命がやばい魔法ばかりじゃねぇか……。

「おい、ジート。俺、コイツ嫌いだ。結婚する気まったく無し」
「ダメだ。もう決まったんだからな」

「……お前の身がどうなっても構わないんだな? コリン、コイツ殺っちまった方が早いぞ」
「そういえばそうね」
「…………」
 ジートが真っ青になって後じさりをする。

「お前が決めたことだからなぁ、仕方ない。死んでくれジート」
「落ち着けユージ。な? コリンも落ち着け」

「「 問答無用!!! 」」

 この後、ジートがどうなったかは……俺の口からは言えねぇ。



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