次の話に進む→

←前の話に戻る

トップページに戻る

小説のページに戻る


 なんでこうなった? 俺の冗談のせいか?
 何はともあれ止めなきゃな。これは洒落にならない。
 あいつらに止まる気配はない。誰かが止めなきゃならないんだ。

第118話 有香VSエリスVS? <<雄二>>


 この勝負はまったくの無駄だ。
 攻撃の届かないエリス。同じく攻撃遮断の壁を持つ有香。
 これはただの精神力の消耗戦になる。そんなのあんまりだろ?

「おい、やめろっつってんだろ!!」
「止めるならユカを止めてよ」
 くそっ、これだからガキは……。

「有香、たいしたことじゃねぇだろ!? ただの冗談じゃねぇか!!」
「雄二君、冗談でも言っちゃいけない冗談もあるんだよ……」
 そんなこと分かってる!! 今回は言ってはいけない冗談なのか?

「お前が大人にならなきゃどうすんだよ!!」
「……それでも退けないの」
「…………」
 なに意地張ってんだよ……。

「やめる気がねぇなら……俺が本気で止めるぞ? 風華」
『いいわ。お互い譲らないなら仕方ないわよね』
「これが最終勧告だ。二人ともやめないと……俺が相手になるぞ」
「「 ………… 」」
 聞こえてねぇのか、俺の声が届いた気配はない。
 睨みあってる有香とエリス。こんな光景は見たくなかった。

(気絶させるか……)
『全力で走れば1秒以内で2人ともいけるわ』
「晃斥」
「きて、壁雲」
 双方に戦闘準備が整ってしまう。
『これで迂闊に近づけなくなったわね。どうする?』
 
どうするって? 俺が攻撃をやらせないだけだ。


「弾けっ!! 晃斥!!」
 しばらく沈黙状態が続いた後、エリスが動いた。
 あのガキ本気で撃ちやがったな!!
 有香とエリスの直線上に入り弾丸と同じ速度で走る。
 
キィン

 有香の直前で弾丸をはじく。
「ふぅ……」
 何とか間に合った。
「ユージ!! 邪魔しないで!!」
「うるせぇ!! 撃つんなら俺を撃て!!」
 事の発端は俺だろ!? なんでおめぇらが争う必要があるんだよ!!

「雄二君、どいて」
「有香もだ。どいて欲しけりゃ俺を倒してからにしろよ……」
 エリスへの警戒を解かずに後方の有香に言う。

「じゃじゃ馬ぁ!! てめぇ、有香を殺す気か!?」
 あの速度は当たり所が悪かったら致命傷だぞ。
「………そんな気はないわ」
 さてはまだ制御しきれてねぇんだな……。
『雄二。斥力がある限り春風も風の矢も効かないわ』
(分かってる。それに矢なんて当てる気ねぇよ)
 なんでこんな状況になっているのかすら分からない。
 だが少なくとも俺は仲間を攻撃する気はない。

「なにをやってるんだ3人とも!!!」

「智樹……」
 俺達全員を止めることができたのは智樹の怒鳴り声だった。
「エリス、部屋に戻って。有香さんはレナさんの家に……」
「「 ………… 」」
「早く!!」

 智樹はキレていた。
 だが、待ってくれ。俺は止めようと思ってただけだぞ?
「トモキ、悪いのはユカだからね」
 そう言ってエリスは家に入っていった。
「…………」
 それに対し有香は無言でレナの家に向かう。

「雄二。なにがあったか、説明してもらうよ?」
「ああ、なんぼでも説明してやらぁ」
 俺はあったことをそのまま智樹に話した。


「そっか、なるほどね……」
「なんか分かったんか?」
 俺は何も分からない。エリスが喧嘩売った理由も、有香が怒った理由も。
「間が悪かったね。雄二……」
「どういうことだよ?」

「言葉通り、間が悪かったんだ」
「何の間が悪かったのかすら俺には分からん」
 当事者であった俺が分からないというのに、なぜ智樹には理解できてしまうのか。
 よく考えれば分かることなのだろうか……。

「OK。だいたい分かったよ。あとは僕に任せておいて」
「ちょっと待て。事情説明くらいしていけ」
 家に引き返そうとする智樹を止める。
「冗談を軽く流せる状態じゃなかったんだよ。二人とも……」
 そう言って智樹は家に入っていった。

「どういう意味だよ……さっぱり分からん」
『同感』
 俺は風華を握り締めたまま、呆然と立ってることしかできなかった。

「ユージさん、ユカさんのことは私に任せといてください」
「え、じゃあ俺は?」
「そうですねぇ、静観でもしててください」
 要するに黙って見てろってことか。

『ま、そう言うなら腕前を見せてもらいましょ?』
(理由も分からんまま解決されるのも癪だぞ)
『いいじゃない。結果的に纏まるなら』
(そりゃそうだが……)
『たとえ仲間でも干渉しないほうがいい時ってあるでしょ?』
(今がそうとは思えねぇけどな)

「ユージさん?」
「え、ああ、じゃ、有香のことは頼む」
「はい」

『せっかくやってくれるんだから素直に受けときな』
(この……適当女め)

「大丈夫ですよ。恐らく一時的なものですから……」
「ん……そうだといいけどな」
 あいつらの相性が悪いとかだったら洒落にならんぞ……。

「レナも状況分かってんのか?」
「いいえ。でも、エリス様もユカさんも悪い人ではないですから」
 そりゃそうだが、相性とかは別問題だろ?

「それに仲間じゃないですか……。だから大丈夫ですよ」
 まったく根拠の無い理論で微笑むレナ。
 仲間って言ってもたった数日しか顔合わせてねぇのに……。

「んじゃ、仲間とやらを信じてみますか……」
「赤の他人よりは信じるに値する繋がりだと思いますよ?」
 そりゃそうだ。あいつ等になにがあっても俺は信じるだけだ。

「たまには私達を頼りにさせてくださいよ」
 レナ、お前までそういう風に考えてたのか……。
 どうやら本当に俺はでしゃばり過ぎらしい。

「頼む」
「はい、お任せください。隊長さん」
 軽く微笑んでから丁寧にお辞儀をするレナ。

「……あのなぁ」
 こっちは結構マジで頼んでんだぞ?
「冗談……ですよ」
 そう言ってレナは有香の待つ自分の家に帰っていった。

「似合わねぇことしやがって……」
 レナは今までの見解上、冗談を言うような奴じゃない。
『後は野となれ山となれってね』
 今回、俺と風華は単なる傍観者になることを決めた……。
 だが俺はこのまま何もしないでいることのできる人間じゃねぇ。
 ふん、俺は俺のできることをやってやる!!



次の話に進む→

←前の話に戻る

トップページに戻る

小説のページに戻る

inserted by FC2 system