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 対策を考えるといっても方法は限られている。
 エリスにレナさんの能力を話すこと、私達が地球から来ていること。
 それをエリスに話すデメリットは既にない……。

第114話 束の間のデート? <<有香>>


 仲間になった時点でエリスに私達のことを話してもいいと思う。
 ただ、レナさんが自分の能力を明かすことになるが……。
 その点さえクリアすることができれば問題はなくなる。
「まぁ、ゆっくり考えようよ。時間はあるんだからさ」
 智樹君の一言で解散ということなった。
 智樹君、エリスは自分達の部屋に戻り、レナさんは帰っていった。

「じゃあ、有香。とっとと行こうぜ」
 二人きりになったところでユージ君が話しかけてきた。
「え、どこへ?」
「買い物だよ。着替え、買うんだろ?」
 そういえばそんなことを地球で話していた。
 いきなりの騒動で忘れかけていた。
 
「ジタルまで行かねぇと服買えねぇからな」
 雄二君の口調はすっかりリオラートの人間だった。
「うん」
 あれ? これってもしかして……2人で行くのかな?

「エリスー。馬車は?」
 気付けば雄二君はエリスと私の部屋の前でノックしていた。
 私はすぐにあとを追った。
「村で共用になってるから勝手に使ってー」
「りょーかい」
 私達の馬車はシア村で共有することになっていたようだ。

 次に向かうのは雄二君達の部屋。躊躇なくドアを開ける。
「智樹、出かけてくるからエリスのこと頼む」
「OK。わかったよ」

「よし、行こうぜ」
「う、うん」
 どうやら2人だけでジタルへ行くようだ……って

(ええ〜〜っ!!?)

 心の中の叫びは当然雄二君には届かない。
「どうかしたか?」
「べ、別に、なにも……」
 雄二君はやっぱりなんとも思ってないのかなぁ。


 馬車の荷台に乗っているが、一人でぼーっとしている。
 雄二君は運転席にいるからだ。
 隣に座るほどの勇気があるわけもなく、ここにいるわけで……。

 なんとなく雄二君と気まずくなっているような気がする。
 原因はやはりあの一件だろう。

「はぁ……」
 自然とため息が出てしまう。
 私があんなことを言わなければ今の状態にはならなかった。
 雄二君のあの性格は分かりきっていたはずなのに……。

 2人で出かけるのは嬉しいことだけど、今じゃなくても……と思う。
「おーい、有香?」
 運転席から呼ばれて荷台から顔を出す。
「何?」
「いや、もうすぐ着くから呼んだんだけど」
 いつの間にか一時間近く悩んでいたようだ。
 前方にジタルの街が見える。
「あそこに行くのも久しぶりだよな〜」
「そうだね」

 久々に見る町並みに感動する。中世を思わせる石造りの建物達。
 街の入り口で馬車を預け、ジタルの街に入る。
「服ってどこで買うんだろうな……」
「え、防具屋じゃないの?」
「普通の服なら防具屋じゃなくても買えるんじゃねぇの?」
 ……確かに下着等の普通の衣服は防具屋になかった気がする。

「まず服屋探しだな」
 私達は周囲を見渡しながら歩き始めた。
 よくみると街の人々は布製の普通の服を着ている。
 一方、私はというと冒険者が着るような旅人の服だ。
 
 街の人たちの服はデザインなども綺麗な服。旅人の服はデザインを無視した動きやすい服。
 これでは私達を見るだけで旅人だということが一目瞭然である。


「ここじゃない?」
 歩いていると服の絵が描かれている看板を見つけた。
「おお、それっぽいな」
 たくさんの人間が出入りしている。女性が若干多いか……。

 中に入ると予想通り服屋でたくさんの衣服が置いてあった。
「ほれ、選んでこいよ。俺はここで待ってっから」
「うん。でも、お金は?」
「大丈夫だって。1000リームほど持ってきてるからな」
 1000リームも……。
「雄二君はいらないの? 着替えとか……」
「あとで俺も買うぞ。智樹の分も含めてな」
 それなら一緒に買えばいいのに……。
 正直、雄二君に新しい服を見てもらいたいという気持ちもある。
 口に出していうのは難しいけれど……。

 3着ずつの着替えを見繕って雄二君と別れた場所に戻る。
「あれ?」
 そこに雄二君の姿はなく、周囲を見渡しても大勢の人で分からない。
 仕方なく私はその場で待つことにした。


 待つこと5分。雄二君がようやく戻ってきた。
「げ、やっぱ早いな有香は……」
 どうやら私が服を見ている間に選んでしまうつもりだったらしい。
 私はそこまでファッションに気を使う人間じゃないのでぱっぱと決めてしまうのだ。
「悪い。会計行こうぜ」
「うん」
 一緒に会計に持っていく。雄二君はしっかり智樹君の分も選んでいた。
 会計を雄二君に任せて私は先に店を出た。

「私も荷物持つよ」
「いいって、そんなに重いもんじゃねぇし」
 両手に紙袋を抱える雄二君の隣を歩く。
「そ、そう」
「とっとと帰ろうぜ」
「え、もう帰るの……?」
 せめてもうちょっと一緒に歩きたかったな……。

「ん〜、そうだな。暇だしヨッテでも飲んでくか」
「……うん!」
「となると、一回荷物を馬車に置いてくるか……」
 私達は馬車に向かって歩き出した。

「あれはリオラートに来るたびに飲みたくなりそうだなぁ」
「本当においしいもんね」
 色がちょっとあれだけど……味は良い。

 一旦馬車に戻った私達は荷物を荷台に置いた。
「あ」
「どうかしたか?」
 どうせなら見てもらいたいな……。
「ちょっと着替えていい?」
「別にいいけど……なんでだよ?」
「……いいから」
 
 本当に鈍いよなぁ……。いつ気付いてくれるんだろ……。
 荷台を締め切って服を着替える。
 薄いグリーンのシャツとミニスカート。
「よし」
 似合ってるかなぁ……。

「おまたせ」
「…………」
「どうしたの?」
「い、いや、似合ってるな」
「え? ありがとう」
 よかった。悪い印象は与えていないみたい。

「じ、じゃあ喫茶店探すか」
「うん」
 私達は喫茶店を探して歩き出した……。



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