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 運動後、シャワーを浴びるのを忘れた。
 そのまま雄二と乱闘に入り、疲れきってしまい泥のように眠った。
 正確に言うと眠っているになるんだけど……

第100話 部屋決めのじゃんけん <<春香>>


 ゆさゆさと揺さぶられている。
 ああ、この揺らし方は雄二だ。
 いつも通りのワンパターンの揺らし方だ。
 だが、このあと打撃に変わるのはこれ如何に……?

「起きろよ。春香」
「まだ眠い〜」
「昨日めちゃくちゃ寝てただろうが!!」
 確かに仮眠室で寝たりしていたが、眠いものは眠いのだ。
「朝食どうすんだよ」
「パス」
 あたしはいつも朝食を抜いている。
 朝食に時間を充てるくらいなら睡眠時間を増やすね。

「……もしもし、結城か? 朝食は有志を募って食うぞ。おう、じゃあ廊下で待っててくれ」
 さやか……よく起きれるわねぇ。今何時よ?
「少佐だ。朝食食うか? ……そんなら廊下で待ってろ」
 少佐と言うことから考えて健吾あたりに電話をかけたのだろう。
「さ、斉藤さんか? おはようさん、朝食どうする? ……おお、じゃあ廊下で待っててくれ」
 こうして全部屋に連絡をする辺りリーダーシップがあると思う。
 雄二自身はそういうと否定するだろうが。

「春香。全員朝食べるってよ。お前だけだぞ?」
 全員参加ですか……。
 何でこういうときだけ早起きなんでしょうか……。
 田村あたりはパスする予定だったのだが、あたし以外っていうのが気に食わん。
 仲間はずれ? と、思うのはあたしの被害妄想だろうか。
「いってらっしゃ〜い」
「本当にいいんだな?」
「いいから行け〜」
 今は食欲より睡眠欲なんよ。

ZZzzz……

 さらば現実、こんにちわ夢の世界……。




 次に起きたのは……いつだ?
「む〜」
 手を伸ばし携帯を取る。ディスプレイを見て唖然とした。
「11時!?」
 何故、誰も起こしに来ないのだ!!
 朝食のあと雄二はなぜ起こさなかったんだ!!
 
 とにかく遊ばなければ。シャワーを浴びて、水着の上から服を着て部屋を出る。
 こうしておけばプールでもゲームでも何でもできる。
 携帯に片っ端からかけたが全員不通。電源が切られている。
「プールか?」
 更衣室で服を脱ぎ、プールに入る。全員揃って遊んでいた。


「春香、やっと起きたのか?」
 最初に雄二があたしに気づき声をかけてくる。
「井上さん、おはよう」
 谷口が挨拶をしながら近づいてきた。
「昨日は大変だったろうから休ませてあげようってことになったんだ」
 小声で言ってきた。
「え?」
「僕は知ってるよ。昨日なにがあったのか」
「……そう」
 まぁ、知っていても何も不思議ではないな。

「あ、僕と当事者以外は知らないから安心して」
 安心も何も、あたしは全員に知られても困ることはない。
 ただ、雄二が知られたくないと言うから秘密にしているだけだ。

「遊ぼうぜ。体力全快だろ?」
 雄二が誘ってくる。
「ん、ところで……なにしてたんだ?」
 ここは競技用プール、その名の通り本当に泳ぐためのプールだ。
「リレーだよリレー。3対3のリレー対決。負けたチームが罰ゲーム」
 面白そうではないか……。
「あたしもやるぞ」
「よし、審判2人な。罰ゲームはどうする?」
 罰ゲームか……。

「昼飯のときにスマイルを頼むのはどうだ?」
「3人でか?」
 ひとりなら面白いネタになるのだが……。
 あ、これで部屋決めたらいいのでは?

「2対2対2にしないか?」
「別にいいが。どうしてだ?」
「負けたチームがダブルベッドルーム。どうだ?」

「「「 ………… 」」」

 いい案だろ?
「OK。俺はいいぞ。一泊も二泊も変わらん」
「私もそれでいいわ」
「俺もいいぞ」
 雄二と結城、田村が賛同。
「……私もいいよ」
「あたしも〜」
 有香、千夏がOKをだす。
「……僕はちょっと遠慮したいなぁ」
「あ?」
 あんだとてめぇ、全員OKだしてんだぞ? と、いう勢いで谷口を見る。
「いえ、なんでもないです……」
 よし、全員承諾。
「俺、審判確定だからいいけどな」
 健吾の意見なぞ聞いてない。

「じゃあまず審判決めるぞ〜。じゃんけんで負けた奴でいい?」
「勝った奴にしよう」
 雄二が真剣な顔で言う。どっちでもいいじゃん。
「じゃ、勝った人ね。最初はグー、じゃんけん、ほい」

 じゃんけんで勝った奴は自動的に健吾と同じ部屋になるわけだ。
 不本意ながら一回戦目で勝ってしまった。
 負けたのは雄二、さやかの二人。
「レース参加決定だな」
「ダブルだけはゴメンよ……」
 敗者のセリフ。
「次いくよ。最初はグー、じゃんけん、ほい」
 おし、負けた!!
 どうせならレースをやりたいあたしは負けたことを喜んだ。
「ふぅ、参加か……」
「おっし!! 負けた!!」
「…………」
 谷口、田村、有香、あたしが負け、ナツ一人が勝った。
 これで決まった。審判はナツと健吾だ。
 心なしか有香が喜んでいるように見えた。

「次、チーム決めるぞ〜。最初はグー、じゃんけん、ほい!!」
 グー2人、チョキ2人、パー2人になる確率はかなり低く、何度もあいこを繰り返した。
 何回やったかも分からない程のじゃんけんの後、チームが決まった……。
 

でかした雄二!!


 雄二・有香ペアが誕生した。私的最高の組み合わせだ。
 そして、結城・田村ペア。あたしと谷口がペアだ。
 よしよし、あとは如何にして雄二を負けさせるかだなぁ。
 あたしは雄二達をダブルルームに送り込むことを使命と断定した。
「妨害ありね」
「上等」
 さらに有利に事を運ぶ。
 雄二があたしの前を泳ぐことはない。妨害万歳。

「有香」
 小声で有香を呼ぶ。
「……なに?」
「わざと負けてもいいんだよぉ?」
 ふざけ口調で挑発した。
「!!? 絶っ対に負けない!!」
 さすがに同じ部屋はいいが、同じベッドは困るようだ。

「チャンスだよぉ? 二度とないかもよぉ?」
「…………負けない」
 悩んだネ。今、アナタ悩みましたネ。

「夢のようなひとときを過ごすヨロシ……」
 そのセリフを最後に有香から離れる。
「ちょ……井上さん!!」
 あたしは絶対に雄二達を負けさせる……その意志は強くなった。



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