次の話に進む→

←前の話に戻る

トップページに戻る

小説のページに戻る


 俺の幼馴染はやはり強烈だった。
 もう何が来ても驚くまいと思っていた俺が甘かった。
 玄関を出て不覚にも速攻で驚いてしまった。

第84話 ドライブでGO!! <<雄二>>


「お前はどこへ行くつもりなんだ?」
「リゾランに決まってるではないか」
 リゾートランドは市街地に立っている。
 プールあり、宿泊施設あり、食事だってレストランや喫茶店まで無数にある。
 それを承知しているのだろうか?

「どうかした?」
 春香が何事かと聞いてきた。
 いや、どうもこうも……。
「俺達はキャンプに行くんじゃないよな?」
「リゾランっつってんだろ。何が不満なんだコノヤロウ!!」
 ついに春香は怒ってしまった。

「じゃあ言わせてもらうぞ」
「おうよ」



「何でキャンピングカーなんだ?」
 俺はコレが言いたかった。
 キャンピングカーは必要ねぇだろ。
 こいつはキャンピングカーに泊まるつもりなのか?
「大人数の移動にもってこいだろ」
「……確かに」

「おはよう、雄ちゃん」
「香織さん、おはよ。今日は運転お願いします」
「了解よ。春香、助手席でナビお願いね」
「やだ」
 即答で断りやがった。

「あらそう、じゃ、雄ちゃんお願いね」
「ち、ちょっと、物分り良すぎじゃないスか!?」
「あたしとしてはナビなんかどっちでもいいのよ」
 あっそ、もういいや。
 俺は牽引車の助手席に乗り込んだ。
 そしてこの瞬間、俺にとってキャンピングカーはただの車に成り下がった。



「本当はねぇ、ナビなんかいらないのよ」
 車を運転しながら香織さんが話し始めた。
「え゛……」
 じゃあ何で俺この席に座って地図開いてんだよ……。
「何遍も行ったことあるし、道も覚えてるわ」
「…………」
「ただ話し相手いないと暇だし……」
 た、ただの我侭ッスか?
「と、いうわけで、あたしの暇潰しに付き合ってね」
「はぁ」
 俺はそういうと地図を閉じてダッシュボードに放りこんだ。

「雄ちゃん。最近どう?」
 何の他愛も無い世間話から始まる。
「何事も無く、平穏なもんだよ」
 本当は最近、いや、今年度に入ってからハプニングの連続だ。
「いい人できた?」
「い、いい人ってもしかして恋人とか?」
「そそ」
 参ったなぁ……俺こういう話、実は苦手なんだよなぁ。

「特にいねぇよ。作る気もないし……」
「あらそう、じゃ、うちの春香はどう?」
「丁重にご遠慮させていただきます」
 春香が恋人だぁ? 冗談じゃない、身体が幾つあっても足りん。
「今日、たくさん女の子が来てたわねぇ。あの中の誰かは?」
 いつの間にか話が修学旅行っぽくなっていた。
 ちょっと待て。なぜ俺は幼馴染の母親と恋愛話をせにゃならんのだ。
「そんなことより……」
「話を誤魔化そうったって無駄よ」
「う゛……」
 見抜かれてしまった。

 あの中って言っても有香か結城だろ?
 
 結城の場合……。
 何すっか分かんねぇなぁ……。
 結城と付き合ったら、あの容姿に落ちたことになるな……。
 それはかなり癪な話だ。

 有香の場合は……。
 想像もできねぇなぁ。
 ただ、アイツ……頑張り屋だよな。
 俺の見る限り、凄い一生懸命なんだよなぁ……。
 ああいう姿勢は見習いたいもんだ。

 ま、どっちと付き合うっつっても俺なんぞ相手にされんだろうね。
「どっちも無理」
 結論はこうだった。
「ふぅん。じゃあ、やっぱり春香しかいないわね」
「香織さん、なぜ俺と春香をくっつけたがるんスか?」
 どうもそういう企みがあるような気がする。

「……だって、あの子のあの性格でしょ? 正直、将来が心配なのよ……」
「あぁ」
 一発で納得のいく答えだった。
 春香……お前は母親に結婚を心配されてるぞ……。
 アイツはいつだったか一生一人だと自分で言っていたような気がする。
 すると母親の心配は報われないわけか……そして
「俺はスケープゴートですか……」
 俺は親公認の生贄の羊になりそうだった。
「雄ちゃん貰ってくれない?」
 春香は物のように扱われていた。
「兆が一、俺が良くてもアイツが断りますよ」
 兆が一な、あくまで万が一じゃなく兆が一な。 
「そうかしら、あの子……まんざらでもないんじゃない?」
「…………」
 ホワッツ?
 なんですと?

「だって毎日起こしに来てて文句ばっかり言ってるけど……」
 けど、なんだよ?
「あの子…………」

ドォン!!!

「うおっ」
「あら」

ピッピッピ ピッピッピ ピッピッピッピッピッピッピ

 液晶表示は春香。
「こちら運転席」
「ふざけたこと話さないように母さんに言え!!!」

ブツッ
ツー、ツー、ツー

「あの……ふざけたこと話さないように、とのことです」
「あら? あの子また盗聴器仕掛けたわね……」
 また!? 盗聴!?
 ってことは……あの会話向こう側に筒抜け!?

ピッピッピ ピッピッピ ピッピッピッピッピッピッピ

「はい」
「雄二。リゾートランドが貴様の墓になると思え」

ブツッ
ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、ツー

「か、香織さん……」
「なぁに?」
「法廷速度を守り、安全運転でなおかつ遠回りってできますか?」
「最短の道しか知らないから無理よ」
 ぐあああっ。
「じゃあ、寄り道しません? 近くの喫茶店とかでお茶とか飲みたいなぁ」
 まだだ!! まだ終わりじゃない!!
 俺は粘った。
「そういうことは私じゃない誰かに言ってあげなさい」
「そういうんじゃなくって!! これは……」
 俺の命に関わる問題なんだよ!!!

 カウントダウンは残り数分となっていた。
「じゃあ降ろして!! 俺、電車で帰るから!!」
「ここまで来たのに?」
「急に両親が事故にあってそうな気がするんですよ!!」
「気のせいよ」
 にべもなかった。

「じゃあ、俺があと数分後に死ぬかもしれないんです!!」
「潔く逝きなさい」
 嫌だぁ!! 死にたくない、死にたくないよぉ!!!
 あぁ、リゾートランドの看板が見える……。
 アレは僕にとってヘブンズドアーなんだね……。
 こうなったら……
 



殺られる前に……殺れ!!!!

 


キッ
 ブレーキ音とともに駐車場に到着する。
 即座に降りてファイティングポーズで出迎える。
 どっからでも来いやぁ!!

ジャキ

「げっ!!」
 ショットガンタイプのエアーガンを構えて出てきた。
「貴様の墓場は駐車場だ。リゾートランドに入れると思うなよ……」

パンッ

「いってぇぇぇぇーーーーー!!!」
 な、何発当たった?
「あたしのカスタムだ。7発同時の散弾をくらいな!!」

ジャキ

「た、助けて……」
 俺はみんなに助けを求めた。

「健吾!!」
「自力で乗り切ってくださいサー!!」
 こ、この薄情者め……

「智樹!!」
「ごめん。助けたいのは山々なんだけど……」
 ちぃ、貴様には頼まんわ!!

「田村!! 俺の盾になれ!!」
「いや、自業自得だろ。陰口はいけねぇなぁ」
 盗聴なんか反則だろ!!

「結城!! 春香を止めてくれ!!」
「え〜、今から肌に傷つけたくないし〜」
 そんなこと言ってる場合じゃないだろ!!

「斉藤さん!!」
 最後の頼み綱。アマゾネスにかけてみた。
「……知らない!!」
 え、なんで怒ってんの?
 プイって何よ、なんでそっぽ向くんよ。

パンッ

「ぎえええぇぇぇ!!!」
 その後、合計を数えることができないほど散弾銃をくらった………。



次の話に進む→

←前の話に戻る

トップページに戻る

小説のページに戻る

inserted by FC2 system