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 俺……テストか金銭面で旅行に行けなくなるのでは……
 いや、俺だって頭が悪いわけではないんだよ。ただちょっと不安なだけで
 井上と同じくらいの成績は取ってるはずだぞ。

第81話 放課後の…… <<健吾>>


「よし、ではこれから<期末テスト赤点だったら補習で旅行行けねぇから何とかするぞ作戦>を開始する」
「長っ!!」
 井上のボケに俺はすかさずつっこんだ。
「作戦名なんかどうでもいいだろ。早く始めんぞ」
 雄二は冷たく切り返した。
 んでもって斉藤さんはというと……
「…………」
 真っ赤になって固まっているわけだ。
 そんなになるなら参加しなきゃいいだろ……。

「じゃ、始めますか……」
 雄二のノリが悪いのでとっととやってしまうことにした。
「科目は何がいい?」
「何でもいいぞ」
 やはり今日の雄二はちょっと冷たい感じだな。
「有香は?」
「わ、私もなんでもいい」
 こっちはこっちで熱い感じだし……

 や、やりにくい。

「はい、今日は数U。決定」
 俺が主導権を握っていかねば……
「却下」
 大佐の却下が入った。
「なぜ?」
「嫌いだから」
 ……てめぇに好きな教科があんのかよ!!

「んじゃ、井上が決めろ」
 俺も面倒になったので井上に任せることにした。
「やはり日本人は国語でしょう」
「じゃ国語な。決定」
 教科なんかどうでもいいからとりあえずこの時間を無駄にしたくなかった。

「国語でいいんだな」
 雄二が確認を取る。
「おお、いいぞ」
「じゃあ始めるぞ。春香、ちゃんとやれよ」
「分かってますって」
 こうして国語の勉強がスタートする。
 


 5分後……


「飽きた」
「早っ!!」
 井上は5分で勉強に飽きていた。
 俺でも30分は続くぞ……
 人はこれを50歩100歩と言うかもしれんが
 6倍違うんだぞ? 立派なもんだろ?

 雄二と斉藤さんは黙々と勉強をしている。
 雄二のやつ、今回はやけにやる気になってるな……。
 いつもはテスト前日でもゲーセンに行ったりしてるんだが……
「井上、もうちょっと頑張れ。旅行のためだぞ」
「どうせ大丈夫だって、何とか毎回赤点逃れてるし」
 そりゃそうだけどよ。
「雄二もなんか言ってやれよ」
 ここは幼馴染の出番だ。
「ああ、春香はこういう奴だからな」
 すでに諦めてるのか?
「小学校の通知表に落ち着きがないと6年間書かれ続けてる」
 直す気ゼロじゃん。
「ま、どれだけ言っても無駄だろ。な、春香?」
「…………上等じゃん」
 げ、井上が怒った。

「アンタの鼻を明かしてやるわ。覚悟しな、雄二」
「おお、いくら頑張っても俺はなんともなんねぇけど頑張れ」

「くきぃぃ〜!! ちくしょ〜、覚えてなさい!!」

ガラガラ
ピシャン!!

 井上は奇声を発して荷物を持って帰っていった。
「アイツは一人でやったほうが効果的なんだよ」
 なるほど……煽ったんだな。
 この男は本当に煽るのが上手い。

「けど……帰ってしまったが?」
「大丈夫。自分の家じゃ落ち着いて勉強できねぇ奴だから図書室か図書館にいるはずだ」
 あ、そう。
 井上春香に関しては親よりもコイツの方が知っていそうだ。
「俺達は続けようぜ。科目は自由、全員同じ科目やる意味ねぇよ」
「お、おお」
 そして3人で勉強会は再開された……。


 
 なんか数分毎に殺気が感じられるんだが……
 俺もB組の端くれだ。殺気を感じることくらいはできる。
 と、いうよりも殺気を感じられるくらいにならないとB組での生存は厳しい。

カチ、カチ、カチ
 カリカリカリ

 無機質な時計の音とペンが紙を走る音しか聞こえない。
 俺もペンを走らせ数学の問題を解く。
 
カリカリカリ

 ふぅ、1ページ終了。
「!?」
 ゾクッときた。
 やはり間違いなく俺に殺意を抱いている者がいる。
 チラッとみんなの様子を見てみた。

「!!!!」
 う、うわ……斉藤さんがめっちゃ睨んでる。
 お、俺、なんかしたか?
「お、俺、ちょっと休憩してくるわ」
「ん、おお」
 俺は教室から逃げ出した。
 
 こ、怖かったぁ……
 俺は購買部に逃げ込み、紙パックのジュースを買った。
 俺が一体斉藤さんに何をした?
 あんなに睨んでくるなんて相当のことだぞ。
 

 …………まったく思いつかん。
 やっぱ俺悪くない。にらまれる筋合い無いッス。
 ジュースを一気に飲んで紙パックをゴミ箱に放り込む。
 さぁて、勉強の続き続き。

ガラッ

 ……なぜ…俺を睨む斉藤有香。
「……俺、バイトあるから…帰る」
 もうこんな空気では勉強をしようという気にならない。
「そうか、じゃ俺も帰る。斉藤さんはどうする?」
「う、うん。私も帰るよ」
 お、俺の一言で勉強会が潰れてしまった。
 しかし俺はあの空気の中で勉強をすることに耐えられそうになかった。

「健吾、帰る準備しないのか?」
「お、おお。ちょっと待っててくれ」
「あいよ」
 教科書とノートを適当に鞄に突っ込んで教室を出た。



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