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 雄二とエリスは謁見に行ってから仲の悪さが多少改善されたと思う。
 仲間になったことを考えるととても良いことだ。
 雄二のよさを分かってくれたのだと期待したいところだけど……。

第68話 和解か休戦か <<智樹>>


 そういえば僕にとって生まれて初めての野宿だ。
 しかし、まさか異世界で体験することになるとは……

「智樹、ちょっと風華と訓練行ってくる」
「今から?」
「最近サボリ気味だからな。念入りにやっとかないと体が鈍る」
「OK。いってらっしゃい」
「おう」
 雄二がやるように僕にも戦闘訓練が必要なのだろうか。

「ねぇ、トモキ」
 エリスが話しかけてくる。敬語を使う気はなく、完全にタメ口だ。
 まぁその方が仲間としては嬉しいけど……。
「なに?」
「ユージってさ……どんな奴?」
「どんなって言うと?」
 何を言いたいかはなんとなく分かる気がする。
「ユージって変じゃない? トモキみたいに生真面目になるときがあると思ったら
あたしと小競り合いをする時みたいにふざけてたりするし……」

 確かに雄二にはそういう風に見られる傾向があるかもしれない。
「そうだね。僕もそう思うよ」
「真面目にできるのに…わざとふざけてるみたい」
 雄二は自分を演じているとでも言いたいようだった。

「ずいぶんと雄二のこと見直したみたいだね」
「……別に」
 言いたくないことがあったようだ。雄二は一体何をしたのやら……。
「雄二がリーダーだって言った理由。分かったでしょ?」
「…まぁね。でも、まだユージを認めたわけじゃないからね!!」
 やれやれ、いつになったら認められるんだろう。
 苦労しそうだよ? 雄二……。

「でも、雄二はあれでいいと思うよ」
「どういうこと?」
「僕もそんなに付き合いが長くないから分からないけど
どうも雄二は真剣になるべき時とそうじゃない時が分かってるみたいなんだ」
「……そうかもしれないわね」

 だから真剣になるときは凄い説得力を発揮している。
「雄二は凄いよ。僕にはとても真似できないね」
「しなくてもいいわよ。トモキはトモキ、ユージはユージ。でしょ?」
「そうだね」
 でも僕は雄二の強さが欲しい……。

「トモキも凄いと思うけどね」
「どうして?」
「人を凄いって認めるのって、結構難しいことじゃない?」
「そうかな?」
「あたしが負けず嫌いなだけかもしれないけどね」
 そう言ってエリスはニッコリと笑った。


「何の話?」
 レナさんの看病を終えた有香さんがやってきた。
「雄二の話だよ」
「雄二君の?」
「ねぇ、ユカはユージのこと、どう思う?」
「え? どうって言われても……」
 言い辛いだろうなぁ……。

「そうね……。雄二君はね、優しいよ」
「優しい?」
「うん、とっても優しい……」
 有香さんはとても穏やかな顔をしていた。

「あれを優しい? ユカって感じ方おかしいんじゃないの?」
 ひ、酷い。そこまで言わなくても……。
「エリスにはまだ分からないと思うけど……優しいよ」
「どう優しいのかまったく理解できない……」
 だろうね。

「エリスへの態度は親近感の表れなのよ」
「へ?」
 有香さんの言うことも一理ある。

「エリスはね。雄二の知り合いに似てるんだ」
 井上さんにね。
「だからあんな態度とるわけなんだけど……」
「その知り合いを恨むわ……」
 その言葉を聞いて僕と有香さんは吹き出してしまった。
「何がおかしいのよ」

「いや、別に」
「ちょっとね」

 あの人を恨んでる人なんて、かなりの人数になるだろうからね。
 異世界の人間にまで恨まれるなんて思いもしないだろうな……。

「雄二と小競り合いは控えてくれると嬉しいな。とばっちりは嫌だからね」
「ユージが絡んでこなきゃ、あたしも何もしないわよ」
 そりゃあ難しい条件だ……。

「さて、食事の準備をしようか。レナさんは?」
「今日は無理だと思う……」
「じゃあ、誰が料理を?」
「…………」
 有香さんは食材を知らないから無理だし……

「エリス。料理ってできる?」
「簡単なものなら。でも、外でなんてやったことないわよ」
 さすがお姫様。野宿も初めてだろうな。
「簡単なものでいいからさ。頼むよ」
「仕方ないわね。ユカ、手伝って」
「う、うん」

 今日の食事がなんだか不安になってきた……。
 雄二は帰ってこないほうが幸せかもしれない……。



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