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 翌日、城にて謁見&勲章の授与がある。
 今回の召喚目的を忘れそうだった。
 やっぱり王様とかいるんだろうなぁ……

第63話 謁見 <<雄二>>


 城についてからはレナの先導に従うことしかできなかった。
 周りを見渡せば無駄に広い廊下と無駄に高い天井。しかも全部石造りだ。
 兵士との手続きが終わったようで俺達は玉座の間へ行くことになったらしい。

「本当にRPGだな。こりゃ」
「ヨーロッパにでも来たみたい」

 有香君。ここはヨーロッパなんぞより凄い場所です。なんせ世界が違う。

「僕達、都会に来た田舎者みたいだね。キョロキョロしちゃってさ」

 田舎者みたいじゃなくて、実際に俺達は田舎者だ。
 シア村というど田舎からやってきた田舎者の中の田舎者。

「遠すぎるぞ。いつまで歩きゃいいんだよ」
「仕方ないよ。お城っていうのはそういう造りにしないといけないんだから」
「お城の造りなんて決まってんのか?」

 その言葉を聞いて智樹が俺のほうを見る。
「雄二……何のために城があるのか分かってる?」
「王様とかお偉いさんが住むためだろ? あと考えられるとすれば……見栄か?」

「違うよ。敵に簡単に攻められないように複雑な構造になってるんだ。
テレビ局だって同じ理由で階段がバラバラに配置されてるんだよ」

「へぇ〜。有香、知ってたか?」
「え? う、うん、テレビ局の話は知らなかったけど……」
 ひょっとして……常識なのか? 知ってて当たり前なのか?

「でもよ、城壁まであるのに敵が攻めてくる可能性なんて少ないんじゃねぇのか?」
「そうでもありません」
 先頭を歩いていた兵士が歩きながら話に参加してきた。
「魔法やウェポンの力で空から攻めてきたり、単独で攻められたりと
様々な方法がありますから、城壁は飾りでしかないんですよ」

「あれが、飾り……」
 もったいねぇ。シア村みたいなところにこそ壁が必要なのにな。
 勲章いらねぇからシア村に壁よこせって感じだな。

「雄二、ちょっと」
 しばらく歩いていると俺の左隣を歩く智樹が肩を揺すってきた。
「ん? どうした?」
「見間違いだといいんだけどさ……エリスさんがいたような気がするんだ」
「エリス? 誰だっけ?」
 
 思い出せん。そんな知り合いいたっけ?

「昨日、宿で会ったじゃないか。男4人吹っ飛ばした」
「ああ、じゃじゃ馬か。……ってなんでじゃじゃ馬がこんなとこに!!」
「知らないよ。見間違いかな?」
「見間違いだ。そうに決まってる」
「そうだよね」

「で、エリスさんって誰?」
 右を見ると有香がこっちをジッと見ていた。
 やっちまった……。あの一件は女性組には話していなかった。
 まぁ、話さなくてもいいかなって思ったから話さなかっただけなんだが……。

「昨日、男4人吹っ飛ばしたじゃじゃ馬女だ。そんでもって礼儀しらずのガキンチョだ」
「ふ、ふ〜ん……」
「そんな説明はないと思うよ……」

「もうすぐ着きますよ」
 兵士が俺達に言った。
 レナはビクッとして「は、はいっ」と返事をした。

「レナ、何を緊張してるんだ?」
「女王様に会うんですよ? 緊張するに決まってるじゃないですか」
「俺は全然緊張してないけど?」
「……私はユージさん達とは違うんです」

 まるで俺達が異常みたいじゃねぇか。

「私もちょっとは緊張してるけど……」
「僕はそれほど緊張してない」
 地球組の意見だが俺達を地球人の基準としてみるのは大きな間違いだろう。
 レナがさっきから会話に参加してこない理由が分かった。固まってたんだな……。

「ねぇ、レナさん。この国の王って女王様なの?」
「ええ、噂ではとっても優しい人だそうですよ」
 これ女性組の会話。

「やっぱ女王っていうくらいだから美人なんだろうな〜」
「期待しすぎるのもどうかと思うよ?」
 これ、俺達、男性組の会話。



「少々ここでお待ちください」
 どでかい扉の前で兵士が言い残して扉を開けて中に入っていった。
「おい、今、チラッと中見たけどよ。赤絨毯だぜ」
「僕達、今更ながら凄いところに来ちゃったね」
「全くだ」
 緊張していない俺達、男性陣は直前まで雑談をしていた。

「どうぞ。お入りください」
「おう」
「は、はいっ!!」
 レナ……今からこの調子で大丈夫か?

 扉を開けて中に入る。最初に見えたのは先ほどの赤絨毯。
 そして10mほど先に玉座があって女性が座っている。あれが女王か……。
 周囲を見渡すと左右に兵士達が赤絨毯をはさんで一列に並んでいる。
 以前見たことのある騎士達だった。

「雄二、雄二!!」
 小声で呼びかけてくる智樹。
「どうした。俺には何も見えん」
 俺は一部分を視界から消去した。
 わかってる。しかし見えないことにして、とっととこの場を去るのが懸命だ。

「ただいま到着しました」
 レナが片膝をつき頭を下げる。俺達も急いでそれに倣った。

「長旅ご苦労様です。頭を上げ、立ちなさい。あなた達は英雄なのですから」
「はいっ!!」
 レナが勢いよく返事をする。
 気合入ってんなぁ……
 俺達は立ち上がりまっすぐ玉座に座る女王を見た。

「シア村の件、大変助かりました。書状は読みましたよ」
 レナはここに着いたときに書状を渡していたらしい。

「ユージ・フジキ、トモキ・タニグチ両名に勲章を与えます」
「「ありがとうございます」」
 この辺の作法はレナに聞いていた。
 しかしレナもよく分かっていなかったので、結局旅人らしくすることにした。

「エリス」
「はい」
 昨日のヤツは勲章を受け取ると俺達の前にやってきた。
「なんでアンタがここに来るのよ」
 俺はヤツを無視して地球で賞状を受け取るように礼をして勲章を受け取った。
 
 勲章は金でできたメダルのようで、この城のデザインが描かれていた。
 バッジになっているらしくネジがついていた。

 智樹は勲章を貰うとき一言二言話をしていたようだ。

バンッ

 勢いよく扉が開き、兵士が飛び込んできた。
「報告します。キール盗賊団の一味と思われる一団を捕らえました。
報告書によると一団は街道で全員気絶していたとのことです」

「全員気絶? あのキール盗賊団が?」
「はっ!! 何者かに昏倒させられた模様です」

 街道っていうのが俺達の通ってきたあの街道なら犯人は間違いなく俺達だ。
「……なぁ、これって言うべきか?」
 ボソッと智樹に聞く。
「言わないほうがいいような気がする……」
「奇遇だな。俺もそう思った」
「じゃあ、言わない方向で」
「だな」
 作戦会議は終了だ。

「あなたたちは街道を通ってきましたね?」
「ああ」
「盗賊が倒れてた、なんてことありませんでした?」

「知らんな」
「僕も見なかったよ」
「私も知らない」
「……私もです」
 上から俺、智樹、有香、レナの順だ。
 レナには嘘に少し抵抗があったみたいだ。

「……そうですか。では話は以上です。下がってよろしい」
「失礼します」 

「帰りは大丈夫でしょうか?」
 部屋を出てから先ほどの兵士が聞いてきた。
「ああ、大丈夫。来た道くらい覚えてるよ」
「では、お気をつけて」


 俺達は宿に戻った。
「こんなもんのためにわざわざ300kmも旅してきたとはね」
 俺はメダルをもてあそびながら言った。
「盗賊の件、言わなくてよかったんですか?」
「厄介事になるに決まってるからな」

ドンドン!!

「強いノックだな。あいよ〜」
 扉を開けると睨みを聞かせたヤツがいた……



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