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 前略……まだ登場すらしていない父さん、母さん、そして妹よ。
 俺……電波系になっちまいました……。
 電波系に一大ブームを巻き起こすことが俺の使命なのでしょうか……?

第53話 行商人と縮地札 <<雄二>>


 俺達はウィズ村への道のりを歩き始めた。
 『無繋』は今の状況で全く使えないので俺のポケットに入れられている。
 地球にいるとき、レナへの連絡手段として使えそうだ。
 ちょっと試してみようかな……。
 俺は指輪を小指にはめて唱えた。
「<<『無繋』よ、我と 井上 春香 の精神を繋げよ>>」


地球で…… <<春香>>

― はぁ〜る〜かぁ〜 ―

「うわぁっ!!」
 どこからともなく声が聞こえてきた。
 周囲を見回しても誰も知り合いはいない。
 叫んだ拍子に周りの人達の注目を浴びてしまった。
「……?」
 気のせいか……?

― はぁるかぁ〜 ―

「この声……雄二か!!」
 前後左右を見渡す。隠れられるような遮蔽物もない。
 しかし声は間違いなく雄二だ。
 有香と谷口君の3人で宴会をエスケープしていた。
 何故あたしは置いていかれたのだ!!
「ちっ!! どこ!? 雄二!!」
 私はこの後、五分近く雄二の姿を探し続けた。


再びリオラートにて…… <<雄二>>

「だぁっはっはっは。春香のヤツ探してやんの」
「何をしたのか、だいたい分かったよ……」
「雄二君。井上さんが可哀想だよ……」
 何言ってんの!? これはささやかな復讐ですよ!!
 それにしても、あの必死さ。

「くっくっくく。た、耐えられん。は、腹がいてぇ……」

「……先を急ぎましょう」
「そうだね」
 レナの言葉に3人が歩き出した。
「ち、ちょっと待てって」
 俺は表情を戻せないまま、慌てて追いかけた。


「いいじゃねぇかよ。ちょっとぐらい遊んだって」
「ソウルウェポンを遊びに使うのはユージさんくらいのものですよ」
「すげぇだろ」
「凄すぎて呆れますよ……」

 レナさんよ。なんか冷たくないかい?

「だってさぁ、こいつこれくらいしかできないんだぞ?」
 俺は指輪を弾いて空中で弄びながら言った。

「使わなくてもいいじゃないですか」
「試してみたいではないか……」
「私たちに試してくださいよ。それを、わざわざチキュウの人に……」

「まぁまぁ、二人とも。いいじゃないか、試すことができたんだしさ」
 智樹が俺とレナの間に入り口論を止めた。
「だろ?」
「それはそうですけど……」

「じゃあ、この話は終わり。いいね?」
「お、おう」
「……はい」

 智樹はこのパーティの仲裁役というポジションに落ち着きつつあるな……。

「で、でも、凄いな雄二君。なんて答えたかは知らないけど
あっさり認めさせちゃうんだもん……」

「だろ? やっぱ分かってくれるのは有香だけだぜ」
「!?………そ、そそ、そんなことないよ」


 しばらく歩いていると向こう側から荷馬車がやってくる。
「おお、馬車だ。すげぇ」
「生まれて初めて見るね」
 荷馬車は俺達の前に止まり、同い年ぐらいの少年が話しかけてきた。
「こんにちは〜。僕は旅の行商人。お客さんどちらまで?」
「私たちはクェードに向かう途中ですけど……」
 少年にレナが答える。
「へぇ、ずいぶんと長旅っすね。いいアイテムがあるけど買うかい?」
「アイテムですか?」
「そうだねぇ……。あの距離を旅するとなると……」
 そう言うと、少年は荷物を漁りだし、小さな木の板を取り出した。
「これなんかどうっすか? 《縮地札》。使い捨てのスピードアップのアイテムっす。
これがあれば通常の5倍くらいのスピードで移動できるよ?」

5倍っつったら車並のスピードだぞ……

「クェードまでだと……6時間くらいでつけるっす。買うかい?」
「ユージさん、どうします?」
 時計を持っていないが今はだいたい昼頃だ。
 これを使えば夜にはクェードにつくだろう……。
「ちなみにいくらだ?」
「安いよ。一枚100リームっす。そのかわり効力のある時間は3時間っす」
「買いましょう、ユージさん。これがあればウィズに行く必要がなくなりますよ?」
「そうだな。買うか……」
「じゃあ、6時間分を4人だから……8枚ください」
「いや、6枚でいい」
「ユージさん?」
「3人分でいい。俺は風華でいけるからな」
「じゃあ、6枚でいいっすか?」
「ああ、じゃあ600リームな」
「確かに、では《縮地札》6枚っす。使用方法はこの紙を見てください」
 俺は行商人から《縮地札》と取説を受け取った。
「まいど〜。また会えたらなんか買ってくださいね〜」
 そう言うと少年は荷馬車に乗ってジタルの方へ去っていった。



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