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 その後、俺達は様々なものを買って街を出た。
 しかし……地球でも有香はあんな買い物をしているのだろうか……。
 どんな店でも泣き出すぞ…あれは……。

第52話 二択の問い <<雄二>>


「で? 手に入れたはいいけど、それどうするんだ?」
 ジタルから離れた草原で俺はレナに聞いた。

「呼びかけてみましょう。力になってくれるかもしれません」
 そう言うとレナは指輪をはめて目を閉じた。


CASE1 レナの場合 <<レナ>>

(私の声が聞こえますか? 聞こえていたら答えてください)
― 聞こえるぞ、新たな所有者よ。我は所有者亡き従者…… ―

 100年も経てば所有者は生きているはずがない。

― 我は我の問いに答えし者に力を貸す者、主は我が問に答えるか? ―
(問い……ですか?)
― そうだ。答えるか? ―
(答えることができる問いには答えます)
― よかろう。この問いの内容は他言無用だ。よいな? ―
(……はい。わかりました)
― 問うぞ? 主と主の大切な者、助かるのは一人という命の危機に晒された ―

― 両方助かることは不可能。主はどちらを助ける? 十秒以内に答えよ。―

(そんな!! え…と、え〜と………………)


― 十秒だ。主は我の認める者ではない ―
(あ、ちょっと待ってくださいよ!!)
― 我が問いに待つ時間などない。さらばだ ―

そんな質問……無しですよ……

「……駄目でした。私にはできませんでした……でも誰でも声は聞こえるようです。
誰か挑戦しますか? 質問に答えるだけで使えるようになるようですよ?」

「俺そんな指輪、小指にしかはまらねぇぞ」
「僕にもちょっと小さすぎるかな……」

 ユージさんとトモキさんには確かに小さすぎるかもしれませんね……

「ユカさん。やってみますか?」
「……うん、やってみる。質問の内容は?」
「言えないんです。言っちゃうと……たぶん挑戦権が消えます」
「わかったわ、貸して」
 私はユカさんに指輪を渡した。ユカさんは薬指にはめた。


CASE2 有香の場合 <<有香>>

「どうやって話しかければいいの?」
私は指輪をはめてレナに聞いた。
「指輪に念じてください。心の声です」
(こんな感じかな……? 指輪さん、聞こえますか?)
― 聞こえるぞ、新たな所有者よ。我は所有者亡き従者…… ―

 うわぁ、本当に話してる……。
(話は聞いたわ。質問に答えればいいのね?)
― そうだ。主は我が問に答えるか? ―
(答えるわ)
― よかろう。この問いの内容は他言無用だ。よいな? ―

 なるほどね。レナさんが言えなかった理由はこれね……。
(了解)
― 問うぞ? 主と主の大切な者……主の場合、雄二という者が相応しいか…… ―
(な!? なんでそんなこと知ってんのよ!!)
― ソウルウェポンとは魂の共有で会話をする。記憶など見通せるのだ ―
(…………)

― 続けるぞ……主と雄二、助かるのは一人という命の危機に晒された ―

― 両方助かることは不可能。主はどちらを助ける? 十秒以内に答えよ。―

(考えるまでもないわ。雄二君よ)
― そうか……。それは我の求める答えではない ―
(!?)
― 主は我の認める者ではない。さらばだ ―

「……こ、答えたのに……」
「駄目だったの? 有香さん」
 智樹君が聞いてきた。
「うん、駄目だった。智樹君、小指でいいからやってみて
こういうのは智樹君の得意分野だと思うから……」

「? まぁ、いいけど……」
 私は智樹君に指輪を手渡した。


CASE3 智樹の場合 <<智樹>>

 あ、これ薬指でも何とかいけそう……。
 僕は薬指に指輪をはめ『神無』に話しかける要領で指輪に聞いた。
(さぁ、聞こえてるはずだよ? 僕にも質問を聞かせてもらおうか)
― よかろう、新たな所有者よ。我は所有者亡き従者…… ―

― この問いの内容は他言無用だ。よいな? ―
(わかってる)
 レナさんが言えないと言った理由はこのケースしか考えられない。

― 問うぞ? 主と主の大切な者、助かるのは一人という命の危機に晒された ―

― 両方助かることは不可能。主はどちらを助ける? 十秒以内に答えよ。―

 こ、これは!? 究極の二択じゃないか!!
 レナさんも有香さんも答えられないわけだ……。

(この問いに答えなんかない!! そうだろう?)
― …………。確かにこの問いに万人共通の答えなどない ―
(じゃあ……)
― だが、我が求めているのは《答え》だ。質問の意味ではない ―
(そんな!? 無いはずの答えを言わなければならないのか!?)

― 違う。我の求める答えを言うのだ ―
(……なるほどね。求める答え……か……)

― そうだ。新たなる所有者よ。主は我の認める者ではない。さらばだ ―

「……これは難しいね。僕じゃあ無理だ」
「やっぱりそうですか……この質問には」
「ストップ。レナさん、これ以上は言っちゃ駄目だ」
 レナさんが質問について話そうとしたのを感じて、急いでレナさんを止めた。

 この質問の意図をいうことは質問を言うのと同じことだ。
 質問に関するあらゆることは言わないほうがいい。
 他言無用としか言われていない。挑戦権の剥奪以外にも何かがあるかもしれない。

「そんなに難しい質問なのか?」
「難しいね。詳しくは話せないけど……凄く難しい」

「面白そうじゃん。俺もやる」
「いいよ、やればわかるよ」
 僕は雄二に指輪を投げた。
「サンキュ。じゃあ、いっちょやってみますか……」
 雄二は指輪を受け取って小指にはめた。


CASE4 雄二の場合 <<雄二>>

「あ、雄二、質問の内容を他の人に話したらどうなるのか聞いてみて」
「ん、了解」
 俺は指輪に話しかけてみた。
「おい、指輪。俺にも聞いてみな。答えてやるぜ?」
「ゆ、雄二君!?」
「ソウルウェポンってのは普通に話しても聞こえるんだよ」
 俺は『風華』と普通に声を出して会話したことだってある。

― 確かにそうだが……心の声で話せ。新たな所有者よ。我は所有者亡き従者…… ―
「ちっ!! 心で話せとよ。じゃ、ちょっと待ってろよ。皆」
「頑張ってね。雄二」
 智樹が応援する。ただの会話に頑張るも何も無いように思うが……。

(じゃ、いこうか)
― ほぅ……主は珍しい魂の持ち主だな…… ―
(は? 何が珍しいって?)

― まぁ、よい。我は我の問いに答えし者に力を貸す者、主は我が問に答えるか? ―
(答えてやるっつってんだろ?)
― この問いの内容は他言無用だ。それもよいな? ―
(他人に話したときはどうなる?)
― どうもならん。我に答える資格が無くなるのみ ―
(ダメージとか呪いとかは無いのか?)
― それほどの力……我には無い ―
(正直だな)
― 他言無用は他の者の為の制約だ ―
(挑戦権がなくなるのは困るわけだ)
― 無駄口が多いな主は…… ―
(はいはい、じゃ、質問いってくれ)

― よかろう。問うぞ? 主と主の大切な者、助かるのは一人という命の危機に晒された ―

― 両方助かることは不可能。主はどちらを助ける? 十秒以内に答えよ。―








(助けねぇ)

― …………何故だ ―
(両方助かることは不可能なんだろ? じゃあどちらかが助かったって意味ねぇよ)

― 片方の命は助かるのだぞ? 何故助かろうとしない、助けようとしない ―
(片方じゃ意味ねぇっつってんだろ。両方助からねぇなら……両方くたばったほうがマシだ)

― ………… ―

― 自分と答えた者もいた。大切な者と答えた者もいた。質問を無視して両方と答える者もいた ―

― 助けないと答えた者もいたが……理由までは言えなかった…… ―
(この質問は人それぞれだからな。ったく、嫌な質問だぜ)

― 元の持ち主が言った理由よりも良い理由だ。意味が無いから……か…… ―
(お前の持ち主はなんて答えたんだ?)
― 片方が必ず悲しみを抱えてしまうから……だ ―
(そっちの答えも悪くねぇな)

 その答えを言った人は何を思ってこの質問を多くの人々に問いかけたかったのだろうか……

― 元の持ち主は言った。この質問に我が納得する理由を挙げたものに従え……と ―
(納得したか?)

― ……よかろう。我は主に就こう……我が名は『無繋』<<むけい>>だ ―
(ふん、まぁまぁな名前じゃねぇか)
― 我は全てを繋げ、結びつける者なり ―
(頼むぜ『無繋』)
― 我は主の魂ではない。したがって共有はするが消すことはできぬ。そして基本能力は使えぬ ―
(じゃあ、何ができるんだ?)
― 追加能力くらいなら使えるだろう……しかし我はもう成長できぬ ―
(何ができるのか、と聞いているんだけど)
― 主の記憶で言うテレパシーというヤツだろうか…… ―
(方法は?)
― 我を持ちて唱えよ。<<『無繋』よ。我と〜の精神を繋げよ>>、と ―

― ただし、相手の名前、顔を知っておくことが条件だ ―
(了解)

「ふぅ……」
「ど、どうだった?」
「こいつの名前は『無繋』だ。認めさせたぞ」
「雄二!! なんて答えたのさ!?」
「さぁ……な」
 
 言えるわけねぇだろ。


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