次の話に進む→

←前の話に戻る

トップページに戻る

小説のページに戻る


 精神的疲労が倍増する旅路を俺達はひたすら歩き続けた。
 お金を稼ぐのはそんなに楽じゃないということを改めて実感することができた。
 それにしても……心臓に悪い旅路だな……

第49話 守る意志 <<雄二>>


「これは……相当心臓に悪いね……」
 地球価値10万円相当のプーチ酒を5本もバッグに入れている。
 智樹の緊張はかなり高まっている。
「仕方ないだろ?これより下のランクの酒だと重量的にな……」
 ちなみに《高級プーチ酒》の金額は100リーム、50本も買うことになる。
 重さはビンビール50本くらい。想像するだけで運ぶ気も失せるだろう?

「なぁレナ。なんで最高級と高級の差がこんなにあるんだ?」
「寝かせてる年数とその年に取れたプーチの品質、最高級はその両方が上質なんです。
高級の方は寝かせてる年数がまだ足りないんで値段が格段に落ちるんですよ
時間だけはどうにもなりませんからね」
「なるほど……ね……」
 酒のことはよく分からないのでとりあえず納得しておいた。

「じゃあ、高級を寝かせておけば価値が上がるの?」
 智樹がレナに聞いた。
 確かに……そういうことになるな。
「上がりますけど保存状態を良くする為の施設を作るのにそれ以上のお金がかかります」
「ん?シア村にその施設があるのか?」
「ええ、村から少し離れたところに酒蔵があります」
 新事実だ。
「じゃあ盗賊とかに襲われたらすごい被害になるな」
「その点は大丈夫です。結界が半端じゃないんで……」
「結界?」
「あるアイテムががないと村の人でも入れないようになってるんですよ」
 そのアイテムが盗まれたらどうするんだろう……

 俺達がシア村を出て2時間が経った。進んだ距離も約21kmってところだ。
「あ、コブリンですよ!!」
 レナが約100m先からこちらに向かってくるコブリンを指差して言った。
「任せろ!! 『風華』!!」
 風華を構えて俺はコブリンに向かって跳躍した。
 
ズバッ
「グギャァア」

 すれ違いざまに胴を切り裂きコブリンを瞬殺した。

「悪ぃな。もう油断も手加減もしないって決めたんだ……」

 俺は既に息の途絶えたコブリンに言い放った。
『雄二くん。かぁっこいい〜♪』
(……黙れ)
「失せろ。『風華』」
 俺は3人の元に戻った。

「終わったぞ」
「瞬殺だったね……」
「まぁな」
 あの時の二の舞はごめんだ……
「さぁ、先を急ごうぜ」
「うん」
 俺達は再び歩き出した。
 しかし有香がその場に留まって動き出さない。
「どうした有香? いくぞ」
「う……うん…」
 有香が走って俺達を追いかけてきた。


 ジタルの街について速攻で酒屋に飛び込む。
「これ売るぞ」
「おっ、シア産の最高級じゃねぇか。一本1150で買い取るぜ」
「んじゃ、5本な」
「5本もか!? よし、おまけして5800で買ってやるよ」
「ありがとよ」
「しっかし、盗賊に襲われなくてよかったな」
「ああ、歩いてる最中ヒヤヒヤもんだったぞ」
「だろうな。はっはっは」
 金を受け取って店を出た。

「金は手に入った。服を買いにいくぞ」
「あ、私は宿を取ってきます。前と同じ宿でいいですね?」
「おう、頼む」
「はい」
 レナが前回同様、宿をとりにいった。
「じゃ、俺達は服買いに行くぞ。もうこのズボンと一刻も早くおさらばしたい」
「そうだね」
 俺達3人は防具屋へ向かった。

「こりゃあ……また……」
「す、凄いね」
 ところどころにある服、服、服。鎧、鎧、鎧。
「有香も値段と相談して好きなの選べ」
「うん」
 有香は女性用の服のコーナーへ、俺達は男性用の服のコーナーへ向かった。
「なぁ智樹、俺達も鎧とか着たほうがいいのかな?」
「いらないんじゃない? 重そうだし……」
「そうだよなぁ……でも、なんかかっこよくないか?」
「雄二……欲しいの?」
 智樹君……君は全く分かってない。
 せっかく異世界に来たのなら着けてみたいではないか。
 という感想を素直に口に出すわけにもいかず
「いや、周りがつけてると……」
 俺達の周囲には冒険者っぽいごつい人たちが鎧を物色している。

「なぁ智樹」
「ん?何?」
 俺は服を見ていて思った。
「この《布の服》と《旅人の服》ってどう違うんだ?」
 俺にはどう見ても一緒に見える。しかし防御力が違うらしい。
「う〜ん。生地がちょっと厚いし、動きやすい作りになってると思うよ?」
「じゃあ《旅人の服》にするか……俺は決まったぞ」
「僕もこれでいいよ」
 智樹は俺と違うタイプの《旅人の服》を手に持っていた。
 俺も智樹も既に試着済みでサイズのほうもバッチリだ。
「じゃあ、あとは有香だな……」
「でもさ、あのエリアには行きにくいね……」
 智樹が女性服コーナーを見ながら言った。
 確かに……女性服のコーナーに俺達が行くのはちょっと……いや、かなり避けたいところだ。
 しかし金は俺が持っている。有香との連絡手段はない。
「よし、レジ前で待つぞ」
「そうだね」
 俺達は会計に向かった。
 しかし既に有香はそこにいて俺達を待っていた。
「悪い。待たせたみたいだな」
「ごめんね、有香さん」
「ううん、私もちょっと前に来たところだから……」
 女の買い物は時間がかかるという話は有香には通用しなかったようだ。
「それも《旅人の服》か?」
 有香の持つ服を見て、俺は有香に聞いた。
「片方は《布の服》でもう一つが《旅人の服》」
 有香は2着、買おうとしていた。
 まぁ女の子だしな、毎日同じ服ってわけにもいかないか……。
 俺達もそうだが、今着ている服と交互に着れば大丈夫だろう。
「じゃ、会計済まそうぜ。レナが待ってる」
「う、うん」

「《旅人の服》3着に《布の服》1着で125リームになります」
「じゃ、125リームな」
「ありがとうございました」
 料金の内訳は《旅人の服》35リーム、《布の服》20リームだ。
 俺達3人は防具屋をでたあと、記憶を頼りに宿に向かった。



次の話に進む→

←前の話に戻る

トップページに戻る

小説のページに戻る

inserted by FC2 system