見覚えのない部屋の中について始めに気付いたのは、足元で眠る斉藤さん…… また一人リオラートに望まぬ客が来てしまったわけだ。 次に気付いたのは……かなり疲れた様子のレナだった。 「智樹……」 「うん……来ちゃったね……」 俺のズボンを握り締めて眠る斉藤さんを見て俺達はため息をついた。 「レナ……この子帰せない?」 「い、今は……ちょっと無理です……。力が……」 レナも相当疲れているようだ。召喚にはソウルウェポンを使っている。 当然、精神力を使って会話や召喚をするわけで 3人もこの世界に呼び出すとなるとかなりの精神力を使うのだろう……。 「何とか眠ってるうちに召還できねぇかな……」 「そうだね。それがベストなんだけど……」 「……ひとまず……寝かせてあげましょう」 「そういえば……ここ、どこだよ?」 周囲を見渡しても見覚えがない。 「ユージさん達の家です」 「ああ、完成したんだな」 「寝室はこっちです」 俺は斉藤さんを抱えてレナのあとにつづいた。 「う……う〜ん」 や、やべぇ!! 斉藤さんが起きる!! 「雄二!!」 小声で俺を呼んだ智樹が、手帳に何かを書き込み俺に見せる。 「言って!!」 わけも分からず俺は手帳に記されている文字を読み上げた。 「ま、まだ寝てろ……。俺はここにいるから……」 「……う……ん……藤木……君…………」 そう言うと斉藤さんは再び眠りについた。 「「ふぅ〜」」 再び眠ったことを確認して俺達は安堵の息をついた。 「危なかったね……」 「上手くいったからいいものの……なんだよ、あのセリフ……」 「成功率90%の方法だよ」 「わけわかんねぇよ……」 寝室についた俺は斉藤さんをベッドに寝かせた。 「レナも……もう休め。だいぶ疲れたんだろ?」 「……すみません。では少し休んできます。着替えなどはタンスに入ってますから……」 レナは自分の家に帰っていった。 俺達はこっちの服装に着替えて居間で悩んでいた。 「どうする?このままじゃ起きちゃうよ?」 「今考え中。送り帰すことができないとなると……」 「打ち明けるしかないんじゃない?」 「それは駄目だ」 「でも、家ができたら友達を呼ぼうって言ってたじゃないか」 「……そりゃそうだけど……」 「だよね。それじゃ、起こしてくるよ?」 「ちょっと待てって!!」 立ち上がろうとした智樹を俺は止めた。 「雄二……本当は誰も呼びたくなかったんだろう?」 「…………」 「時間のこととかもあるし、何よりここには命の危険もある。 だから雄二は誰も呼びたくなくなった…………違う?」 「…………」 図星だった。だから何も言えなくなってしまった。 最初は皆を呼びたかった。でも、ここの危険性を知ってからは 誰も呼ぶ気がなくなっていた。 「でも来てしまったものは仕方ないよ。この世界のことを話してあげようよ。 それからどうするかは斉藤さんが決めることであって雄二が決めることじゃない」 「……呼び出してから説明するのって……なんか変じゃないか?」 「そうだね。事前に説明する時間もあったのにね」 「だろ?斉藤さんの時間を勝手に奪ったことにならないか?」 「そうなるね。責められても何も言えないね」 「智樹はなんとも思わないのか?」 「思うよ。でも……もうなんともならないんだよ。責められる覚悟はしてる」 「また、覚悟……か……」 この世界に来るといつも覚悟につきまとわれるような気がする。 たとえ斉藤さんに責められても……俺は何も言えない、言う資格がない。 また、俺は一人の人を巻き込んでしまったんだ……。 あの時、逃げる以外にも方法はあったと思う。今になって思いついたりする。 「雄二、“覚悟”はいい?」 「……ああ、俺も責められる準備はできた」 「じゃあ、起こしてくるよ……」 智樹は立ち上がり寝室に向かう。 「智樹」 「何?」 「襲うなよ?」 「バカなこと言わないでよ!!」 俺は智樹をからかうことで、なんとか心の余裕を保とうとしていた…… |