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 全ての競技が終わったらしく、残すはサッカーの決勝だけになった。
 全校生徒が2−B VS 3−Fの試合を見に来ている。
 メンバーがそろうまで作戦会議の時間となっている。

第40話 B組の闘い10 <<雄二>>


 健吾たちバスケのメンバーがヘルプに入る。
 ベストの布陣の完成だ。
 智樹には情報の確認に行ってもらっている。
 さぁ、ゲームの始まりだ……

「まず、俺がキーパーに入っとく」
「じゃあ、俺ディフェンダー」
 健吾が意外にもディフェンダーを志望する。

「健吾、珍しいな。お前フォワード行きたいんじゃないのか?」
「おめぇがフォワードにいなきゃ意味ねぇ」
「あっそ、んじゃ、各自好きなポジション行け。もう知らん」
「「了解」」
 その結果……

キックオフ!!

「なぁ軍曹……」
「なんでしょう、少佐」
「4−0−6ってなんやねん!! 中間処理する奴いねぇじゃん!!」
「好きなポジション行けっつったの雄二だろ。文句言うな」
「それでも誰か入るだろ普通!?」
「俺達に“気遣い”の3文字は無い」
「じゃあ、“遠慮”の2文字を入れといてくれ……」
 俺は心の中で泣きながら健吾に訴えた。

「“自由”と“勝手”の文字にアンダーライン引いてあるような奴等だぞ?
今更、“遠慮”を入れても無駄だな。おっと、 敵が来たぞ!!」
 そう言って健吾はディフェンスに戻っていった。
「誰でもいいからクリア上げろ!! 後はフォワード陣に任せろ」

「「了解」」
 ディフェンダーの一人がクリアを上げる。
 これで任務完了。
 ゴールポストに寄りかかってボーっとフォワード陣の攻撃を見ていると
 智樹がやってきてフィールドの外から話しかけてきた。

「雄二。優勝決まったよ。確定だ」
「智樹か……そっか決まったか……」
「じゃ、あとはご自由に……」
 そう言って智樹は応援席に戻っていった。

 智樹が戻っていったのを確認すると俺は息を大きく吸い込んだ。

「野郎ども!!! 優勝決まったぞぉぉ!!!!」

 フォワード陣にも届くように全力で叫んだ。

「「「「 おおおおおお!!!! 」」」」

 応援席のクラスメイトからも声が上がる。知らされていなかったのだろう。
 智樹もなかなかにくい演出をしてくれるもんだ……。

「遊べっ!! 野郎ども!!!」

「「「 イエーーーーィ!!!」」」

 ここからはサッカーのルールはほとんど無視だ。
 全員攻撃、全員守備。ボールに群がる11人。

「あ、やべぇ!! フリーだ!!」
「なにぃ!? 行け!! 田村伍長!!」
「イエッサー!!」
 田村が背後からスライディングをかます。反則上等の荒業だ。

ピィーーー

「イエーィ!! イエローカードゲットだぜ!!」
「甘い!! どうせなら赤いの貰って来い!!!」
「次俺行く!! 俺!!」
「よし、青木伍長。君に決めた!!」
「イエッサーッ!!」

 PKを難なく防ぎ、攻撃に出る。
「よ〜し!! 行くぞ我に続け!!」

「「「 おおっ!!! 」」」

「行くぞ!! 健吾!!」
「こいっ!! 雄二!!」
 俺が逆サイドにセンタリングを上げる。
 健吾がそれにあわせてボレーでゴール前にける。
 俺がダッシュでボールに追いつき
「くたばれや!! ボケがぁ!!」
 思いっきり蹴ってやった。
 ボールはキーパーの手をはじいてゴールネットに突き刺さった。

「やっぱいいねぇ。フォワード最高!!」
「久々のコンビプレーもなかなかでしたな」
「軍曹!! 君は曹長に昇格だ!!」
「ありがとうございます!! 少佐!!」

「次ディフェンスだ!! 青木伍長!! 作戦通りに行け!!」
「イエッサー!!」
 ディフェンス陣には1人を残して全員通さないよう指示してある。
 その1人がドリブルで突っ込んできたところを背後から……というわけである。
「はっはっは!! 死にたまえ〜!!」

ピィーーー

「イエス!! 赤いの貰ったぁ!!」

―― 今のB組にレッドカードは勲章である……   藤木雄二 ――

「野郎ども!! 青木伍長に続けっ!! ボールに喰らいつけ!!」

「「イエェーーーイ!!」」

「次は俺が行く!! あとは頼んだぞ!!」
「「イエッサー!!」」

 PKを再び防いだあとパスを貰って敵に突撃。
「ほい、ハンデだよ」
 敵にパス、敵がドリブルを始める。

「ただでやるわけねぇだろ!! ボケがぁ!!」
 俺の横を通り過ぎてから背後にスライディングをかます。

ピィーーーー

「よっし!! 一発レッド!!」
 俺は右腕を高々と挙げ嬉々として退場した。
 クラスメイトからも声援があがる。
 キーパーが得点、退場するサッカーは世にも珍しいだろう。
 ましてや退場を……反則を喜ぶスポーツなどありはしないであろう……

 応援席に行くと春香が悔しそうな顔をして言った。
「あたしも参加したい……」
「自分の生まれてきた性別を恨みな!!」

「お疲れ。雄二」
「おう、智樹。情報収集ご苦労さん」
「真面目にサッカーやるとは思ってなかったけど……」
「ありゃ、暴走してるわな……」

「藤木君が煽ったくせに。よく言えるわね」
 結城がつっこんでくる。
「結城だって色仕掛けだけで決勝進出だろ?お互い様だ」
「やれって言ったの藤木君じゃん!!」
「お前、演技派なんだから仕方ないだろ」
「藤木君、アンタあたしをなんだと思ってんの……?」
「当然…………と、友達に決まってるじゃないですか……」
「何よ今の間は……」

 誤魔化しが効かない!! 何とか話をそらさねば!!
 おお、いいところに斉藤さん!!

「俺、斉藤さんに話あるんだ。じゃな」
「ちょっと待ちなさい!! 話はまだ……」
 俺は結城から逃げ出した。

 ああ言ったからには斉藤さんと話をせにゃならんだろう。
「よっ、斉藤さん。俺の言ったこと守ったみたいだな」
「ふ、藤木君!! あ、あの……お疲れ様!!」
「おう、斉藤さんもお疲れ。宴会、参加するだろ?」
「う、うん!! もちろん」
「斉藤さん頑張ったもんな。野球の優勝は斉藤さんの功績だな」
「そ、そんなことないよ……井上さんだっていたし……」
「春香は途中参加だろ?斉藤さんフル出場じゃん」
「……うん」
「ま、宴会のとき俺達のグループで飲もうぜ」
「う、うん!!」

 今日一番頑張っていたのは斉藤さんだと思う。
 俺も春香もたいしたことはしていない。

 智樹が再び話しかけてくる。
「雄二。終わったよ」
「おお、そうか。結果は?」
「同点……」
「ってことはPK?」
「そういうこと……雄二も蹴ってくれば?」
「ん、そうする」
 それにしても退場2人も出しといて同点って……



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