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リオラトロワイアル 第5話 

「助けて……助けてよ……」
 爆発音や銃声。それに頭に響く意味不明な声。
 奈々の精神状態は既に混乱状態を通り越していた。
「死にたくない……誰か助けて……」
 死にたくない、助けてほしい。その2つの言葉を繰り返し呟く。
 もちろん彼女が一番待ち望んでいるのは藤木雄二。
 しかし、どんなに待っていても彼は来ない。
「雄二……助けて……死にたくないよ……」
 彼女が篭っている廃墟は位置にするとC6地区。
 武器も食料も何も持っていない彼女は体力的にも精神的にも限界に近づいていた……。






 有香はヨッシーと別れたあと、西の方へ歩きだした。
「確かD4地区は禁止エリアよね……」
 現在の時刻は午前10時28分。既に3箇所の禁止エリアができていた。
 地図を見ながら、だいたいの距離を予測して危険エリアを避ける。
「E5……は避けた方がいいかな?」
 E5地区は12時に禁止エリアになる。全員移動を始めている頃だ。
 この場合、移動中に偶然参加メンバーに遭遇してしまう可能性は高い。
「でも、もし、雄二君がE5にいたら……」
 逆にそう考えると会える可能性に賭けてみる価値もあるな、と有香は考える。

「……行ってみよう」
 危険かもしれないが彼女の目的のためにはそんなものは小さなことだ。
 有香にとって命の危険よりも現在の目的の方が大事なのである。
 警戒心を高めながら有香は慎重にE5地区に入っていった。






 そのE5地区にいるのは藤木千夏だった。
 美空の殺害現場から動くこともなく小さくうずくまっていた。
「…………」
 彼女は泣き疲れ、精神的にボロボロになっていた。
 しかし、マシンガンに弾を込め直すことを忘れずにいたのは喜ばしいことか……。

「……誰か来た」
 静かな空間に僅かに鳴った木の葉を踏みしめる音を聞いて、身を竦める。
「撃たなきゃ……撃たなきゃ……」
 耳に手を当て、どの方向から鳴ったのかを聞き取ろうとする。
「こっちだ!!」

パパパパパパパパパパン

 マシンガンが火を噴き、前方の木々に蜂の巣が出来上がる。
「誰!? 私は戦う気はないわ!! 撃つのを止めて!!」
 撃った方向から聞こえる叫び声にも似た訴えに千夏は気付いた。
「ゆ、有香姉? 有香姉なの!?」
 初めて出会う知り合いに千夏は銃を放り捨てて有香の姿を確認しようとする。

「千夏ちゃん!? なんで……こんな……」
 木の陰から出てきた有香は周囲の様子を見て驚いていた。
 無理もない。有香からしてみれば千夏が容赦なく銃を撃つことが信じられないのである。
 しかし、千夏は一度殺されかけていることもあり、疑心暗鬼になっている。
「有香姉、有香姉!!」
「千夏ちゃん……」
 しがみついてくる千夏の頭を有香は優しく撫でるのであった……。


「お願い有香姉。ずっと一緒にいてよ……」
 有香からしてみればこの場所にいつまでもいるわけにはいかない。
 彼女にはやらなければならないことがある。それに……。
「とにかくこのエリアから出なきゃ、一緒に行きましょう」
「…………」
 千夏の腕を引くが動こうとはしない。

「どうしたの……千夏ちゃん?」
「腰が抜けちゃってるよぉ……」
 半べそを掻きながら涙目で訴えてくる。
 携帯電話を確認する現在11時10分。危険エリアになるまであと50分。
「ほら、乗って」
「うん……」
 千夏を背負うと有香はD5地区に向かって歩き出した……。


 D5地区に到達すると、一旦千夏を降ろす。
「ここまで来ればしばらくは大丈夫だわ」
「…………」
 何を言っても普段どおりの千夏には戻らず、怯えて縮こまっているままだ。
(可哀想に……耐えられるものじゃないわよね……)
 しかし、千夏をこのまま一緒に行動していては雄二を探せない。
 かといって千夏を放ってこの場を去ることもできない。
 有香はこの場に来てジレンマを抱えることとなった。


「ユカちゃんか……なんで俺が会うのは女の子ばかりなんだろうな」
 ブロードソードを構えたジートが草むらから堂々と出てくる。
 有香は千夏への対応で周囲への警戒を怠っていた。
「ジートさん!? 正気ですか!? 自分が何をやってるか……」
「分かってる。ユカちゃんも最低だと思うだろうな……だが、これもコリンの為だ」
 剣を正眼に構え、本気である証拠に殺気を出す。
 
「悪いな……」
「千夏ちゃん逃げて!!」
「あ……あ……」
 ジートの振りかざす剣を有香は避けるが千夏は避けきれない。
 2人の直線上に剣が一閃する。

「千夏ちゃん!!!」
「…………」
 ジートの剣が赤く染まる。千夏の中心を切り裂いていた……。

「ジートさん!! こんなことしてコリンさんが喜ぶはずない!!」
「甘いな有香ちゃん。どんなに頑張っても生き残るのは一人なんだぞ?」
 そう言って有香に向けて剣を構えなおすジート。
「……考え直す気はないんですか?」
「残念ながらな」
 有香は最後までジートを説得するつもりだった。
 しかし、ジートは既に決意を固めてしまっている、説得は無意味だ。

「絶対に貴方は間違ってる……」
「それは俺が決めることだ」
 斬りかかってくるジートの剣を体勢を整えた有香は難なくかわす。
「うっ……」
 有香はかわし際に鳩尾に全力で拳を叩きつけていた。
 ジートの身体はそのまま地面に崩れ落ちた。

「私は誰も殺すつもりない……。でも貴方は……」
 有香はここでジートを殺しておくべきか迷った。
 千夏を何の躊躇いもなく殺したジートを生かしておいていいのだろうか?
 

 結局、決めることができずに有香はこの場を去った。
 ブロードソードを禁止エリアであるE5地区に投げ捨てて……。

藤木千夏 死亡  死因:斬殺 二日目11:16






「何か……何か方法はないのか?」
 Marchのもっていたリボルバー銃を回収し、森を抜けた雄二。
 そこには岩場が広がっていて、視界も開けている。
 雄二は岩場を背にして寄りかかり、そこで打開策を必死に考えていたのである。
「ちくしょう。なんで友達と戦わなきゃならねぇ!!」
 このゲームの不条理さ、理不尽さに腹を立てる。
 誰かに命を狙われないように雄二は隅にあるA6地区に逃げ込んでいた。

「春香のやつ……なに考えてんだよ」
 雄二には、このゲームに真っ先に乗った春香の考えが分からなかった。
 長い付き合いでも分からないことは当然ある。
 特にこんな特殊な状況での春香の感情なんか分かるわけがなかった。

ドォォォォン!!

 突如、背にしていた岩が跡形もなく爆破された。
「……!!…………」
 聴覚が麻痺し、無音の中で雄二は第2撃目の弾を肉眼で確認した。
 必死に走ったが爆撃の有効範囲から出ることはできなかった。

ドォォォォン!!

「ぐあっ!!」
 爆風に巻き込まれ、雄二の身体は垂直方向に吹っ飛んだ。
 身体中から血が出ていて、どこが痛いのかも分からない。
 
 その攻撃で、雄二の死亡を確信したのか、3発目は来なかった。
「……どうせなら…殺してから行けよ」
 数分後、爆発が来ないことを知った雄二は誰かも分からない犯人を責めた。
 そして、その一言の直後、雄二は意識を手放してしまった……。


メンバー表
No 名前
藤木 雄二
井上 春香
谷口 智樹
斉藤 有香
風華
高槻 健吾
吉沢 猛
結城 さやか
溝口 奈々
10 コリン・クリーク
11 田村 直人
12 壁雲
13 レナ・ヴァレンティーノ
14 エリス・クェーデリア
15 神無
16 藤木 千夏
17 美空
18 ジート・クリーク
19 March


残り12人



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