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リオラトロワイアル 第4話


 このゲームがスタートして一日と経たないうちに4分の1が脱落した。
 ある者は容赦なく殺し、ある者は人のために殺す。
 また、ある者は殺されないように隠れ、ある者は大切な人を探す。
 様々な想いが交錯する殺戮ゲームは2日目を迎えた……。


 コリン、健吾の2人は交互に睡眠を取ることで安全を確保していた。
 武器は健吾の持っていたベレッタ一丁のみ。頼りない銃が命綱だった。
「ねぇ、健吾」
「早く寝ろよ。俺が警戒してる意味ねぇだろうが」
 今はコリンが眠る番で健吾はベレッタを握り締め周囲を警戒していたのだ。

「アンタってユージ・フジキの何?」
「……あ? 雄二? ただの腐れ縁の親友だ」
 名前の呼び方に少々疑問を覚えながら健吾は答える。

 健吾にとって雄二は親友であるし、雄二にとって健吾もまた親友だ。
 井上春香、藤木雄二、高槻健吾。この3人は中学校で共に戦った戦友でもある。

「友達は選んだ方がいいわよ?」
 コリンは心の底から健吾に警告をする。
 あの男の友達というなら、苦労しているというのが容易に想像できるからだ。
「……そういうお前はユージのなんだよ?」
「さぁね。一応、婚約者にされかけたこともあったけどね」
「マジかよ!?」
 大声で驚くわけにもいかないこの状況で健吾は小声の限界で叫んだ。

「ねぇ、なんであの男の……
「静かにしろ。お客さんのようだぜ?」
 コリンの質問を途中で遮り健吾は気配の方向に注意を払う

「いつでも逃げれるようにしとけ……完全に殺る気だぞ」
 コリンも健吾の言葉を聞いて緊張を高める。
 確かな殺気を一瞬感じ取ったのだが、すぐに気配が消えてしまった。
(こりゃ……相当な強敵だな)
 健吾も息を殺し気配を絶つが、相手はそれに気付いている。

パァン、パァン、パァン!!!

 木の陰から井上春香が姿を現した。横っ飛びで撃ってくる。
「井上!? おい、コリン、逃げろ!!」
 健吾からしてみれば相手が悪すぎた。井上春香の身体能力は嫌というほど分かっている。
「なんなのよ。あの女!!」

パァン、パァン!!

「雄二の幼馴染だ!! 逃げなきゃ死ぬぞ!!」
 コリンに叫びながら応戦する。
 木を盾にした銃撃戦が始まってしまった。

「井上!! やめろ!! 俺だって分かってんだろ!?」
「相手が誰だろうと関係ないね。死ぬヨロシ」
「洒落になってねぇんだよ!! 本当に死んじまうんだぞ!?」
 健吾は必死に春香の説得を試みる。その様子を怯えながらコリンが見守っていた。

「そんなこと分かってる。田村を消したのはあたしだからね……」
「……お前、もう殺っちまってんのかよ」
 止められないと悟ってしまった健吾は改めて春香の手強さを実感した。
「だから健吾。アンタでもあたしは容赦しないよ?」

パパァン パパァン!!

「おい、コリン。5秒後に思いっきり走れ。逃げるぞ」
 健吾は銃撃戦を続けながらコリンに逃走を促す。
「……分かったわ」
 相手の強さ、恐ろしさを実感することが十分にできたコリンは健吾の意見に同意した。
 あの女、井上春香は躊躇することなく人を殺せる人間だ。
 一刻も早く逃げなければ殺されてしまう。

1・2・3・4…

「走れ!!」
 
パンパンパンパンパンパン……

 春香に撃たせる隙を与えないように健吾はありったけの弾を撃ちつくす。
 もちろん後方に下がることも忘れない。

 
 銃声がなくなった……その場に取り残された形になった春香は溜息をついた。
「逃がした……か」
 深追いは禁物。春香は誰に言われなくともゲームの効率のよい動き方を理解していた。






 壁雲はただ歩き回っていた。場所にして言うとE2地区。
 彼もまたゲームに乗ろうとしている者だった。
 最初に箱を開けたとき、手裏剣が出てきたのには落ち込んだが……。
「ちくしょう。誰もいねぇじゃねぇかよ」
 しばらく歩くと前方にコテージが見えた。
 しかも何かを焼いているのか、煙突から煙が出ていた。
「馬鹿な奴もいたもんだな……普通やらねぇぞ。どこのマヌケだ?」
 壁雲は感情を隠すこともせずにニヤリと笑った。
 ゆっくりと音を立てないようにコテージに近づいていく。

「ん?」
 足元にワイヤーが張られているのが見えた。
「こんなもんに俺が引っかかるわけないだろ?」
 ワイヤーを軽くまたいで次の一歩を踏み出した瞬間……。

ドォォォン!!

 足元からの爆発に一瞬で彼は吹き飛ばされた。
 そのことにすら壁雲自身は気づくことなく彼は絶命したのである。

「あら? 誰かが罠にかかったようね……」
 コテージでミルクティーを飲みながら爆発のあったであろう方向を見る。
 そう、エリスだ。彼女はあらかじめコテージへの獣道に地雷を埋めていたのである。
 説明書を見て使い方を理解した彼女はワイヤーのフェイクまで仕掛けていた。
「本当に地球の兵器は残虐だわ……」
 雄二に聞いてはいたものの、どんな物なのかは理解できていなかった。
 それ故に、雄二の言葉が深い意味を持っていることが分かる。 
「あと何人がこの罠にかかってくれるのかしら」
 エリスはそう呟いてからミルクティーを一口啜った。

壁雲死亡  死因:爆死 二日目05:21






「なんだぁ?」
 壁雲が起こした爆発の最も近くF4地区にいた人間が彼、ヨッシーこと吉原猛だった。
 木の上に登り、煙草を吸っているところでいきなり爆発音が聞こえた。
「おうおう、やってるねぇ、さすが俺の生徒達だ」
 彼は自分の生徒が大暴れしているのだと確信していた。
 そして、その生徒に自分が殺されてしまうのだろうということも……。

「先生……?」
「おお、斉藤か。お前も災難だったな」
 木の根元にいたのは有香だった。
「先生も参加する気はないの?」
「まぁな。人間死ぬときゃ死ぬ。俺はここで死ぬ。それだけだろ?」
 ヨッシーは既に自分が優勝することができるなどこれっぽっちも思ってなかった。

「諦めたんですね……」
「そうだ。斉藤、お前はどうする? 諦めるのもお前の勝手だ、好きにしろ」
 この教師は決して生徒に何かを強要することはなかった。
 自主性を重んじるといえば聞こえはいいが、要はどうでもいいのである。

「私は探さなきゃいけない人がいるから……」
「ん? ここにいるのか? お前はとことんついてないなぁ」
 ここにいる以上、どちらかが死ななければならないのである。
 ヨッシーは有香の不幸に同情するものの、助けてやろうとは思わない。

「じゃあ、頑張って生き残ってください」
「生きてたら……またな」
 有香はそのやり取りを最期に雄二の居所を聞くこともなく去っていった。


「やっぱり貴方、雄二に少し似てるわね……」
「アンタは?」
「雄二の姉ってところかな? 雄二がいつもお世話になってるわ」
 風華は雄二の保護者のように振る舞い、ヨッシーに挨拶をする。
「へぇ、で? 俺を殺しにきたのか?」
「まさか。あたしはまだゲームに乗り気じゃないわ」
 このゲーム、ほぼ全員が雄二の知り合いだ。そして、それは風華の知り合いでもある。

「ルールとはいえ、知り合いを斬っていくなんてちょっとね……」
「そのわりには武器は持ってるみたいだな?」
 ヨッシーは風華の腰に収められている2本のナイフを見ながら言った。
「念のため、よ。相手が殺る気になってるなら、こっちもその気にならないといけないからね」

「んじゃ、せいぜい頑張れよ。そのうちゲームに乗るんだろ?」
 ヨッシーは風華の言葉の意味をしっかりと理解していた。
 今はまだゲームに乗る気じゃない。そう、まだ、だ。

「貴方もね、生き残ってたらまた会いましょう」
「…………」
 ヨッシーが何も言わないうちに有香と同じ方向へ風華は音も気配もなく走り去っていった。


「次に会うときは敵じゃねぇか。俺は二度とゴメンだな」
 2人と遭遇しても命の危険はなかった。
 もしかしたら、彼は比較的ラッキーな人間なのかもしれない……。

メンバー表
No 名前
藤木 雄二
井上 春香
谷口 智樹
斉藤 有香
風華
高槻 健吾
吉沢 猛
結城 さやか
溝口 奈々
10 コリン・クリーク
11 田村 直人
12 壁雲
13 レナ・ヴァレンティーノ
14 エリス・クェーデリア
15 神無
16 藤木 千夏
17 美空
18 ジート・クリーク
19 March


残り13人


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