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リオラトロワイアル 第2話


― 斉藤有香さん スタートしてください ―

 機械的な神の声と呼ばれる声が有香のスタートを告げる。
 これで19人全員がスタートすることになる。
「どこにいるの……雄二君」
 有香はスタート時、雄二を探すことしか考えていなかった。
 ひとまず雄二が向かった方向へ歩き出した。

「有香ちゃん」
「!!?」
 いきなり声をかけられて有香はビクッと身構える。
「俺だよ」
「……壁雲」
 有香にとっては魂の共有者。壁雲は木の陰から姿を現した。
「有香ちゃん。最初に言っておく、誰も信じるな。当然アイツもだ」
「…………」
 有香は壁雲の言う『アイツ』が雄二だということは分かっていた。
「アイツがこのゲームに乗ったとき、有香ちゃんにとっては最強の敵になる」
「そんなこと絶対ない!! 雄二君がゲームに乗るなんてありえない!!」
 壁雲の言葉に有香は絶対の自信を持って反論する。

「どうかな? 有香ちゃんを殺しに来る可能性だってあるんだぞ?」
「構わない。雄二君に殺されるなら……」
「……それだけは俺が許さねぇよ」
 一瞬の殺意とそのセリフを残して、壁雲は有香の下を去っていった。

「雄二君に手を出したら……貴方でも許さない」
 誰に言うでもなく、有香は新たな決意と共に雄二を探すためにゲームをスタートした。






「コリンの奴どこ行ったんだよ……」
 シア村自警団長ジート・クリークは娘のコリンを探すのに躍起になっていた。
 途中の箱で見つけたブロードソードは自分向きだったので念の為に持っていた。
 ジートは周囲の気配を探りながら慎重に歩き回る。
「ったくあのバカ娘め。心配ばっかりかけやがって」
 森を歩くことに慣れているジートはこのゲームでは有利な方だ。

「誰だ!!」
 ジートは何者かの気配を感じ取り、足元の石を投げつけた。
「きゃぁ!!」
「この声……レナか!?」
 押し殺したような叫びにジートは反応する。

「ジ、ジートさん……?」
「レナ……」
 ジートが確認した姿はレナ・ヴァレンティーノだった。
「レナ、悪いな。俺はなんとしてもコリンを勝たせなくちゃならねぇんだ」
 ジートはそういうとレナに向けて剣を構える。
「ジートさん!! 何を言ってるんですか!?」
「本当に……悪いな」
 全力でレナに向かって剣を振り下ろした。
 確実に致命傷を与えるように、一撃で葬り去るために……。

「あ……う゛……」
 一言も発することもなく、レナは絶命する。
 それと同時にレナの姿は霧となって消え去った。
「ゲームオーバーってわけか……ちくしょう」
 見た事もないほど気持ちの悪い紫の空に向かってジートは毒づいた。

レナ・ヴァレンティーノ死亡 死因:斬殺 一日目20:49






 溝口奈々はスタート直後、健吾とは反対方向へ走り出した。
 そして今いる場所……一軒の廃墟の中だ。
 奈々はその廃墟にに篭ってずっと震えていた。
「誰なの? あの人達……。なんでこんなことしなきゃなんないの?」
 彼女にとっての友達は雄二ただ一人。それ以外は顔も知らないのである。
「雄二……雄二……」
 唯一の友達であり親友の名を紡ぐ。
 彼なら助けてくれる。彼ならこのゲームをなんとかしてくれる。
 奈々は久しぶりに見た雄二の顔を思い浮かべ泣きながら唇をきつく結ぶのであった。






 とある茂みで一人の少女がうずくまっていた。

ガサッ

「誰!? 誰なの!?」
 藤木千夏は異常なほど脅えていた。
 風の物音にすら過敏な反応をしてしまうほどに……。
 付近にあった箱を開けると出てきたのはSIG550。所謂、マシンガンだ。
 ご丁寧に取説まで入っていて、千夏はそれを抱きしめるように持っていた。
 いつでも撃てる状態にして……。
「……貴女は誰?」
「嫌、嫌だぁ……来ないでよぅ」
 迫ってくる美空に千夏は後退りするように逃げる。
「待って、話を聞いてほしいの!!」
「は、話?」
 千夏の動きが止まる。美空も一定の距離を保ち、足を止める。
「エメラルド色の髪をした女の人を見なかった?」
 
「み、見てない……」
「そう、じゃあもう用はないわ」
 美空がさっきとは違った冷徹な表情を見せて千夏に拳銃を向ける。

「あ……あ……」
「さようなら……お嬢ちゃん」
「い、嫌だぁーーーーっ!!!!!」

パァン!!
パパパパパパパパパパパパ!!


カチカチカチカチ

 千夏のマシンガンは弾切れになってもまだトリガーは握られていた。
「ね、ねぇ……どこに行ったの?」
 既に霧となってしまった美空の姿を千夏に確認できるはずもなかった。
「あたし……殺しちゃったよぅ……」

カチカチカチカチ

 マシンガンの音と千夏のすすり泣く声だけがその空間に響いた……。

美空死亡 死因:射殺 一日目21:05






 井上春香はスタート時からゲームに乗る気だった。
 本来ならたとえ春香でもこんな理不尽なゲームに乗ることはなかっただろう。
 しかし、このゲームの参加者は春香にとって知らない人間が多すぎた……。
「ふん、グロックか……まぁまぁね」
 掌サイズの拳銃を握り締め、春香は足音を消しながら進んだ。
「…………」
 呼吸を落ち着けながら身をかがめて進む。
 その姿は、まるでこのゲームでの戦い方を知っているようだった。

(いた……)
 人影を確認すると気配を消しながら慎重に近づく。

パァン! パァン! パァン!!

 十分に近づいたところで容赦なく3発。頭に1発。胸に2発撃ち込む。
「い……いの………う…え」
 後ろを振り向きながら、よろりと崩れ落ちていく。
「ゴメン……あたしはまだ死ぬわけにはいかないのよ……」
 井上春香の流した一筋の涙を確認した者は誰もいない……。

田村 直人死亡 死因:射殺 一日目21:59

メンバー表
No 名前
藤木 雄二
井上 春香
谷口 智樹
斉藤 有香
風華
高槻 健吾
吉沢 猛
結城 さやか
溝口 奈々
10 コリン・クリーク
11 田村 直人
12 壁雲
13 レナ・ヴァレンティーノ
14 エリス・クェーデリア
15 神無
16 藤木 千夏
17 美空
18 ジート・クリーク
19 March


残り16人

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