ああ、やれやれ……やっと旅立った桃太郎。 鬼ヶ島に向けて歩き始めました。きび団子を大量に持って…… さぁて、もうそろそろ出番だぞ? 犬さんよぉ。 「誰が犬よ!! よくもこんなふざけた役をこの私に与えたわね!!」 さすが犬(コリン・クリーク)だ。よく吠えらぁ。 それに、役を与えたのは俺じゃねぇし、Marchでもねぇぞ? 「あら、犬さん。どうしました?」 「レ、レナ姉さん……役に入りきらないでよ……」 お〜い、コリン。 あんまり名前を出すなよ〜。 そいつは桃太郎だ。 「どうしました? 元気がないですねぇ?」 「…………」 ほれ、早くセリフだ、セリフ。みんなが出番を待ってるぞ〜。 「くっ……」 「コリンさん……早く言わないと駄目ですよ」 早く言わねぇと、お前の親父が鬼に拷問されることになるぞ〜? 「あいつらに拷問なんてできるわけないじゃない……」 「で、でも、セリフを言わないと始まりませんよ?」 「…………」 いいから言っちまえよ。犬はよろよろしながらこう呟いた…ハイ!! 「………………………お腹がすいた…ワン」 プッ……い、犬はどうやらお腹をすかせているようです…っ!! ……!! 「笑いをこらえてるのバレバレよ!! 私だってこんなセリフ言いたくないわよ!!」 「ああ、それは可哀想ですねぇ」 「レナ姉さ、桃太郎も普通に流さないでよ!!」 ほれ、続きだ続き。とっとと食料要求しろよ。 「お腰に着けたきび団子、一つ私にくださいな」 「一つといわずに二個三個。どんどん食べちゃってください」 犬の棒読みの要求に桃太郎は喜んで大量のきび団子を渡しました。 おい、桃太郎。7個くらいにしとけよ? 他にもお供は来るんだからな? 「わかってます。犬さん、7個までですよ?」 「別にお腹すいてないから1つでいいわよ」 おい、腹減ってる設定なんだぞ!? マジで答えるな!! 「じ、じゃあ、とにかく鬼ヶ島へ行きましょう」 「はい、はい、行けばいいんでしょ、行けば……」 こうして犬は桃太郎とともに鬼ヶ島へ行くことになったんだよ。 きび団子は残り19個。いったい何匹のお供をつける気なんだろうな……。 しばらく歩いた桃太郎ご一行は林に入っていきました。 「猿が出てくるのよね……」 「はい、そうらしいですね」 ストーリーをばらすな!! 俺が要らなくなっちまうだろうが!! え〜 犬が言っちまったが、猿がきび団子の入った袋を盗みました。 「いっただき〜♪」 「……速過ぎよ」 「…………」 猿は目にも留まらぬスピードで袋を持って、遠くの方へ逃走しました。 オイ!! 帰ってこい!! 猿(風華)!! 疾風を使うな!! 「しょうがないわね〜 はい、きび団子。あたしの分貰っとくわね」 袋を返した猿でしたが、自分の分と称して13個のきび団子を失敬しました。 ……犬の分まで取りやがって。 まぁいい。 もともと無かったもんだ。 「あげるって言ってませんけど……」 「くださいとも言ってないわね」 「どうせ貰うもんでしょ? 早く行きましょ。鬼・ヶ・島♪」 早くも主導権が猿に移りつつある桃太郎ご一行。桃太郎に主導権は……ねぇな。 どうやら最初から桃太郎には主導権が無かったようだな……。 「ねぇ? キジいらないんじゃない? このメンバーで行きましょ」 「そ、それは駄目ですよ!! キジさんの出番がなくなるじゃないですか!!」 「それに……あの人放って行ったらあとが怖いわ」 桃太郎ご一行はキジを排除する計画を立て始めました。 待てって!! キジ連れていかなかったら桃太郎じゃなくなるだろうが!! 「アンタら!! 早く来なさいよ!!」 上空からキジ(エリス・クェーデリア)の登場です…ってオイ!! 登場を早めるな!! ったく、設定どおりに進む奴はいねぇのかよ!! 「あ、キジさん。きび団子食べます?」 「ええ、一ついただくわ」 降りてきたキジに桃太郎はきび団子を与えました。 「さ、行きましょ。これでキジの登場シーンがカットできるわ」 「これで……いいんでしょうか?」 いいわけねぇだろ? でも俺にはお前らを止められねぇんだよ…… 「さて、次は船着場ね。早く行きましょ」 「あ、はい」 桃太郎と犬・猿・キジの1人と3匹は船着場に向かいました。 「い…いらっしゃいませ」 船頭にしてはやけに若い娘(斉藤 有香)が苦笑いで立っていた。 おい、斉藤。営業スマイルくらい無料でしてやれよ? 「え゛……。 そんなこと言われても……」 「あ、あの船頭さん。船ください」 うろたえる船頭さんに桃太郎は普通にセリフを言いました。動揺しねぇんだな…… 「船は一隻3時間5000円です。びた1文まけられません」 船頭さんも役になりきり、船頭としての役目を果たそうと必死です。 桃太郎の所持金は当然0円。所持品もきび団子が6個と刀しかありません。 「無料で……くれないんですか?」 「当たり前じゃないですか。桃太郎だろうが大統領だろうがお金は払ってもらいます!!」 商売に厳しい船頭さんだな……。 しかもなんで単位が'円'なんだよ……。 「有香ちゃん……あたし達をそんなに鬼ヶ島にやりたくないのね」 「…そ、そんなことはないわよ!! お金さえ貰えれば……」 猿の指摘を船頭さんは必死に否定しました。しかし、遅かったんだよ。 それを聞いた、キジがとどめの一言を放ったわけだ……。 「あ、なるほどね。 鬼を守りたいわけ?」 「違うわよ!! 私は商売をしてるだけ!!」 「?????」 事情を理解しているのは猿とキジだけらしいな。桃太郎と犬は頭に?を並べてらぁ 「結局、鬼はやられちゃうからねぇ……あたしも心苦しいけどね」 「…………」 「こんなときにも恋愛感情出さないでよね」 船頭さんの顔はすでに真っ赤です。よほど恥ずかしかったんだろうな…… その隙を狙って犬と桃太郎が船に乗り込みました。船を失敬するつもりです。 ……これでいいのか? 桃太郎って……こんな話だったか? 「私は良く知りませんから……」 「いいのよ。私達は何も知らないんだから」 たしかに犬も桃太郎も原作を知りません。キジは……まぁ、知っているのかもしれないな。 「船頭さん……アンタねぇ仕方ないでしょ? アイツ守りたいのはわかるけどさ」 キジが船頭さんの相手をしている隙に猿が船に乗り込みました。 「よし、<<風よ、私の指示に従いなさい>>」 突風が船を押し出します。これでは完全に強盗です。 なぁ、お前等、桃太郎のイメージをこれ以上壊すなよ……。 「キジ!! もういいわよ!!」 「了解」 キジは空を飛び、悠々と船に乗船した。船頭さんは放心状態です。 「…………はっ!! ド、ドロボーーーー!!」 「悪いわねぇ!! 鬼を倒したらちゃんと返すわ〜!!」 「ごめんなさ〜い!!」 船は鬼ヶ島に向けて、どんどん進んでいきます。 「壁雲!! <<アブソリュートウォール!!>> 」 しかし、船頭さんも負けていません。無敵の壁を張り、行く手を阻みます。 オイ!! お前等!! 能力をホイホイ使うな!! 「で、でも……」 デモもクソもあるか!! 船頭の役目は船を渡すこと!! 鬼に寝返ってどうする!! 「…………壁雲、消えて」 同時に壁が消え、やっと鬼ヶ島に向かって旅立った桃太郎ご一行。 かったりぃ、まだ続くのかよ…… |