いきなり異世界に呼ばれて熊に襲われてと大変だったが 俺はついに自由を手に入れることができた。 これからはこの世界にちょくちょく呼んでほしいものだ。 俺の気晴らしのために…… 「着きました。ここが私の村。シア村です」 レナが片手でどうぞと村を紹介している。ちなみにあの森から4kmも離れていた。 シア村はまさにRPGに出てくるような"村"だった。 つまり小さくて狭い。そしてなにより、しょぼい。 「さっそくレナの家行くぞ。この格好は目立ちすぎる」 村に入る前からすでに村人の視線がめちゃくちゃ痛い。なんせこっちは制服だからなぁ…… 「そうですね。父の服でよければどうぞ着てください」 さっそく、そそくさと俺たちはレナの家に入っていった。 俺はレナの親父の服に着替えた。 うむ、異世界に来たって感じだな。服が村人っぽい。 ユージは村人の服を装備した。 「あ、なかなか似合ってるじゃないですか」 「そか。さんきゅ」 適当に返して俺は椅子に座った。 (なぁ風華、お前どうやったら消えるんだよ……) 俺は短剣『風華』を持ったままだった。 『なんだ。消えてほしいのならそう言えばいいじゃん』 「…………」 (言わなきゃダメなのか?) 『ダメ、これはソウルウェポンの決まり。覚えておいて。呼ぶときも名前を口で言うこと』 「了解。『風華』消えろ」 ようやく消えた。 短剣持ったまま村に進入するのはかなり気まずかったので制服の中に隠したのだ。 そこへレナがお茶を入れて戻ってきた。 「ユージさん。ユージさんのウェポンの名前ってなんですか?」 「ん?風華だよ」 「女の方なんですね。ちょっと意外です」 「何だソウルウェポンにも性別とかあんのか?」 「はい。男性のウェポンもあるんですよ」 「へぇ〜。ところでさこのウェポンってこの世界じゃ誰でも出せるのか?」 「結構出せる人は少ないですよ」 誰でも出せるってわけじゃないのか……ちょっと優越感あるな。 「あ、言い忘れてました。私はウェポンのことは秘密にしてますんで誰にも言わないでくださいね」 「ん?なんでさ?結構自慢できるんじゃねぇの?」 「私の能力はこの世界では何の役にも立ちませんから……」 レナは俯いて少し悲しそうに言った。 「……まぁ、そうかもな」 地球とコンタクトとっても何の役にも立たないわな…… 「そういえば風華さんの能力ってなんなんですか?」 いや、短剣に「さん」付けって……。 「俺も知らん。聞いてみるか……」 (おい、風華どうなんだ?) 『…………』 (おい!!風華!!) 何で答えないんだ?出なくなったのか? 不思議そうな顔をした俺にレナが言ってきた。 「あの〜出してるときじゃないと会話はできませんよ?」 なんですと〜 「……そういうことは早く言ってくれ……『風華』来い」 『何よ。消して5分も経ってないじゃない』 (黙らっしゃい。お前って何できんの?) 『能力?基本能力は風のような速度かな』 (基本能力?他になんかあんのか?) 『ユージの傷を治したでしょ!!』 (ああ、そうだったな。で?能力ってひとつじゃないの?) 『あの美空って子はまだ追加能力がないのかな?』 (追加能力ってなんやねん) 『聞きなさいよ。追加能力ってのは文字通り追加の能力』 (で、お前さんの追加能力は?) 『治癒と簡単な風の魔法。成長によってまだ増えるわ。あたしもまだ第8級だし』 (何?おめぇらランキングあんの?) 『宿主の魂と心の成長度によってランク付けされるの』 (第8級っていいの?) 『いいわけないでしょ。目覚めたばっかにしては優秀だけどね』 (ちなみに美空って何級よ) 『さぁね、本人に聞いてみれば?』 (質問チェンジ。風の魔法って何よ) 『地球に帰ったら教えてあげる。学校の裏山で練習でもしましょ』 こいつは目覚めたばかりでなんで裏山のこと知ってんだよ。 「ありがと。『風華』もういいよ」 『ぽんぽん呼び出さないでよね』 そう言って風華は消えた。 なんちゅう自己中な剣だ。 「レナ。ウェポンの大抵のことは分かったよ」 「そうですか。結構時間かかりましたね。で、風華さんの能力ってなんだったんですか?」 「ん〜。基本能力が速度強化で追加で治癒と風の魔法だって」 「えぇ〜!! じゃあ、たぶん美空よりランクは高いですね」 風華に言われたとおり聞いてみることにした。 「そうなのか? 美空って何級なの?」 「美空は第9級です。追加能力は異空間の操作です」 「操作?」 「はい、基本能力はコンタクト。夢に出る程度で精一杯でした」 「ああ、あの能力な……」 いきなり寝ているときに話してくる心臓に悪い能力だ。 「で、第9級になったら異空間の小さな範囲の空間を操作できます」 「それが召喚か……」 「はい、召喚とはこっちの空間とチキュウの空間を入れ替えることなんですよ」 「じゃあ、地球にはこっちにいた何かを飛ばしてるのか?」 「それも操作できます。何を飛ばして何をこっちに持ってくるのかを私の意志で選ぶことができます」 「じゃあ、次に来るときは何か目標があったほうがいいってことか……」 「そうですね。できればこっちの世界のもののほうがイメージしやすい……そうだ!!」 何かを思いついたように椅子から立ち上がる。 「どうした?」 「ちょっと待っててください」 そう言ってレナは自分の部屋に入っていった。 俺は話に夢中で忘れていたお茶の存在を思い出した。 そのお茶はすっかりぬるくなっていた。 |