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 俺って苦労人だよ。絶対そうだよ。
 生徒指導のブラックリスト入りを果たしたのも春香のせいだ。間違いなく…
 ゴッドよ!! 俺の苦労をわかってくれ!!

第2話 魂の演説 <<雄二>>

 俺たちは1時間こってり絞られて生徒指導室をあとにした。
「春香…。頼むからもう問題を起こさないでくれよ」
「頼みぃ?頼んでいるにしては態度がなってませんねぇ」
「…………」
 我慢だ、我慢するのだ俺!! ラウンド2は避けるのだ!!
「もういい。お前に頼んだ俺が馬鹿だった」
「ば〜か、ば〜か」
「…………」
 耐え忍ぶのだ。忍耐なのだ。ここで耐えなければ俺に未来はない…
 教室に戻って授業を受けるのだ!!

 何とか無事に教室に戻り授業を受ける。
(まぁ授業なんか聞いちゃいないんだけどな…)
 自分の席でボーっとしていると隣から声が聞こえた。
「雄二、雄二」
「なんだよ、授業中くらい静かにしとけ」
 お互い授業中なので小声で話している。
「これ、これ見るヨロシ」
 何で中国人風なんだよと心でつっこみながら紙を受け取った。
 教科書を盾に紙を広げてみた。

 その紙には『2年B組ベストカップル投票』と書かれていた。
 そして、俺と春香に11票も集まっていた。
「なっ!!」

ガタンッ!!

 俺は思わず席を立ち上がってしまっていた。
「どうかしましたか藤木君?」
「い、いえ、なんでもないです……」
 誤魔化しつつ席に座った。
 教師が黒板に向かったのを見計らって春香に話しかける。
「どういうことやねんコレ」
「そういうことですよ」
「いや、お前なんとも思わんのかい」
「周りの評価なんてどうでもいいっしょ?」
「む… まぁそうか…」
「早く隣に渡したら? この授業中に全員に回すらしいよ」
「わかった」
 なんか俺たちが圧倒的にトップなのもムカつくので
 『正』の文字で書かれた票を3票まで減らしてから隣にまわしてやった。

 そして授業が終わり結果発表の時間が来た。
「そんじゃあ結果を発表するぞ〜」
 その声にみんなが教卓の男子生徒に注目する。
「我がクラスのベストカップルは・・・・・・」
「だららららららら……」
 いや、ドラムロールいらんから……。口で言っててもむなしいだけだから……。
「藤木、井上ペアに決まりました〜!! おめでと〜!!」

「「…………」」
 俺たち、ぼーぜん。

 クラスメイトのテンションは最高だ。
 なんで?俺、票消したじゃん。8票も削ったじゃん。
 8票っつったらクラスの5分の1よ?
 健吾がやってくる。
「おめでとう。君たちはクラス公認のカップルだ」

「「うれしないわ!!」」

 っていうか何この企画?俺たちをはめるための罠?
「なあ健吾……」
「ん?なんだ?」
「この企画ってさ。誰が考えて誰が実行したんだ?」
「ああ、教卓にいる田村だ。あいつ窓際の一番前だろ?だから全員に回しやすいんだ」
「ほぅ、そうですか。田村君ですか……」




(生かしてはおけない!!!)

コツ…コツ…コツ…

 動き出した俺。静まり返った教室。響く足音…

ぽんっ

 にこやかな笑顔とともに田村の肩を優しくたたき
「地球のために貴様を殺す!!」
 俺は田村を引きずり教室を出た。
 その後、田村君は保健室で一日を過ごすことになる…

 田村を始末したあと、俺は速攻で教室の教卓に立った。

バンッ!!!

教卓を両手で叩く…
「2−Bの諸君!! 君たちは絶大なる勘違いをしている!!
ヤツは恋人でもなんでもないのだ!!」
 ビシッと春香を指差し言い放つ。
「ただの幼馴染!! お・さ・な・な・じ・み なんですよ!!
僕が起こさないとヤツは学校に来ないんですよ!!
僕は恋人じゃない!! あえて言うなら生贄の羊なんですよ!!
君たちは生贄の羊を羨ましいと思うのかね!? 微笑ましいと思うのかね!?
そして僕がこの境遇に満足していると思うのかね!?
否!! 断じて否!! 君たちは生贄になったことがないから分からないのです!!
もう一度言おう!! 君たちは勘違いをしている!!」

し〜ん……

「…魂の叫びだ……」
 健吾の一言がきっかけになってクラスがいっせいに盛り上がる。
 だが、盛り上がっていない人が約1名……
「雄二……。お前は……授業中に何をやっとるんだぁ〜!!」
 言うまでもない春香だ。先生まで涙して拍手を送っているというのに……
 はい、結果から言いましょう。ボコられました……

 そしてまともに授業が受けられないまま昼休みを迎えた。



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