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 結局、学校からは奉仕活動3日間の罰が与えられ、クソ暑い中、草むしりをやることになった。
 校長もヨッシーも事情を理解しているらしく、緊急会議もなしで罰が決まった。
 俺はどうやらこの学校には信頼されているらしい。 それが嬉しかった……。

番外編 偶像の涙4  <<雄二>>

「お前よぉ、もうちょっとスマートに事を済ませられねぇのかよ?」
「悪ぃ。 迷惑かけちまったな」
 学校には世話になりっぱなしだ。 ヨッシーもさぞかし苦労しているんだろう。

「まぁ、お前がやったことだから間違いはないと思うがな……」
「そうだといいんだけどなぁ……」
 ヨッシーの監視のもと、ブチブチと草をむしる俺は後悔なんてしちゃいなかった……。

「あ〜 暑ぃ!! もうやめねぇか?」
「あのなぁ、一応罰だろ? やめ、とか言っていいのかよ?」
 ヨッシーは自分が暑いから、という理由で罰を中断させそうだった。
「校長も怒ってねぇし、俺も怒るどころか褒めてる。 罰になる理由がねぇだろ?」
「…………」
 じゃあ、なんで俺は罰掃除なんかやってんだよ……。
「こんなもん体裁繕う為にやってるようなもんだぞ? バカバカしい」
 学校として罰を与えなければならなかった。 それがこの草むしりの理由だった。
「じゃあ、ヨッシーは職員室にでも避難してろよ。 別に監視しなくてもやるっつうの」
「……お前、このあと暇か?」
「暇だけど、なんだよ?」

「奢ってやる。 飲みに行こうぜ」
「教師が堂々と生徒に酒を勧めるな!!」
 夕暮れになるまでメチャクチャな教師との会話に付き合いながら草をむしった。
 こんな罰で済まされるようなことじゃなかったはずだった。
 夏休みが数日伸びるようなことになっていてもおかしくないような事件だった。
 それが、こんな草むしりで免除。 この学校の懐の深さを知った気がする。

 まぁ、そのあと本当に飲みに行ったんだが……いいんだろうか?

 

 さらに、千夏へのサインを貰うことも忘れ、俺はかなり怒られた。
「嘘つき! 貰ってきてくれるって言ったじゃん!!」
「だから、何度も謝ってるだろ? そんな時間なかったんだって!」
 サイン色紙なんか喧嘩のときにボロボロになっちまったっつうの……。
「お兄ちゃんがコンサートでなんか事件起こしたって噂が凄いんだよ!?」
 そう、この事件は湊市の学生の間では結構有名な話になったそうだ。
 そのこともあって、俺の知名度は一気に跳ね上がった、というのは智樹からの情報だ。

「あたし、いろいろ聞かれて困ってるんだから!」
「だから悪ぃっつってんだろ? アイツのためなんだから仕方ないだろ?」
「むぅ…………。 今度会ったときは絶っっ対に貰ってきてよね!!」
 扉を荒っぽく閉めて、千夏は俺の部屋から出ていった。

 千夏は本気で俺の事を怒ってるわけじゃない。
 どうやら俺の理解者はたくさんいるらしい。 そのことが嬉しく思えた。



 んで、もうひとつ、智樹に聞いた後日談なのだが……
 この事件は新聞に載ることもなく、闇に葬られたらしい。 芸能界は便利だな。
「まったく、いつもながら無茶するよ……」
「そう言うなよ。 ちょっと暴れただけだろうが」
「まぁ、被害者がマネージャーの宮本さん一人っていうのは雄二にしてはマシな方かもね」
 コイツはコイツでどっからそんな情報を仕入れてくるのやら……
 聞いても無駄だと分かっているから聞かないわけだが、謎だということに変わりはない。
「あ、それから、これは未確認なんだけどね。 ナナさんのマネージャーが代わったらしいよ?」
「へぇ、やっぱり俺のせい?」
「まぁ、そうなんだけど……。 女の人に代わって仲良くなってるんだってさ」

 お前にだって友達はできる。 溝口、お前は偶像なんかじゃない。
 人間だって思ってくれる奴なんて、どこにだっているんだ……。

「よかったね、雄二」
「なにがだよ? 俺は何も言ってねぇだろ?」
「よく言うよ。 そんなに嬉しそうな顔してさ」
 俺はそんなに嬉しそうな顔をしてたらしい。 当然だ、実際に嬉しいんだからな。



〜〜♪ 〜♪

「おっ、メールか?」
 結局、いろいろあったが、あの日からも俺と溝口奈々の連絡は途絶えることなく続いている……。



あとがき
はい、というわけで偶像シリーズ第2章でした。
え〜…はじめに言っておきますが、『偶像ってやつは』を超えてる自信がありません。
成長してないのかなぁ……
それでも全力を懸けて書きましたんで……許してください。

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