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 覆水盆に返らず、融けた氷は同じ温度じゃ戻らない。
 粉々になれば大気に触れる表面積も増し、融けるスピードが跳ね上がる。
 ジュースに浸かったジュースなんて売り物になるわけがない。

番外編 俺達の海物語 後編 <<雄二>>

「ごめんなさい」
 中身がぐちゃぐちゃになったクーラーボックスを傍らに土下座をする。
「な……なにがあったらこんなことに?」
「え〜と……砂浜に足を取られてこけた」
 転んだくらいではこの惨状はありえないのだが真実も語れない。
 結局、俺は喧嘩したときの言い訳のようなことしか言えなかった。
「雄二、本当は何があった?」
 そこに優子の援護射撃と言わんばかりに追及してきたのは健吾。
(バカ!! このまま普通に誤魔化しときゃ楽に終わったのに!!)

「え? 嘘なの?」
「コイツがそんなマヌケやるわけねぇしな」
 こりゃ別の理由を考えるか本当のことを言うしかねぇぞ。
 かといって智樹じゃねぇんだ。そんな急に別の理由なんか思いつかない。
「田村に任せたら客を殺しそうになったからドロップキックで止めた」
「わかった、もういい……」
 健吾はそれを聞いただけで何が起こったのかを理解したようだ。
 田村はありえないことを平気でやる奴だから荒唐無稽な話も信用される。
 そういう意味では田村の名はありがたいものだった。

「やっぱコイツ転んだようなもんだわ」
「ん? よくわかんないんだけど……まぁいっか」
 あの説明では2−Bどころか湊大付属でもない優子は納得できないだろう。
「中身の方は給料から引いといてくれ」
「ん〜、そこらへんはお母さんに言っといて」
 あ、コイツって雇い主ではあるけど決定権とかはないんだよな。
「お咎めなしだと思うけどね」
「あ、俺もそう思うぞ。美智代さんは優しいからな」
 俺としては弁償した方が償えた気がしていいのだが……。


 美智代さんにこけたことにして事情を説明してみた。
「あら、怪我とかしなかった?」
「へ? あ、はい」
「次は気をつけてね」
「はぁ、すみませんでした……」
 説教タイム終了。一秒たりとも怒られることはなかった。
 健吾が言うようにとても人を叱ることができなそうな優しい人だった。

「ね? お咎めなしだったでしょ?」
「あぁ……でも、店としてこれでいいのか?」
「いいんじゃない? 海の家と旅館の売り上げ考えたら外販なんて端数だし」
 しれっと言ってくれるが、それなら俺が売り子やった意味はどうなるんだ。
「もしかして……売り子って意味ねぇのか」
「サービスに無意味なことなんてない。でしょ?」
 そうかもしれない。利益だけを求めてるわけじゃないってことか……。

「雄二、ちょっと来い」
 店の仕事に戻るなり店の奥に引っ張り込まれる。
「な、なんだよ? まだなんかあんのか?」
「……お前、本当に井上に内緒でここに来たんだろうな?」
「当たり前だろ。それに俺達が集まった時間にアイツが起きてるわけねぇだろ?」
 いきなり何を言いだすのだ。俺が裏切るとでも思っているのか?
「だよな。だが……来てるぞ」
「なにっ!?」
 咄嗟に伏せてしまう。もはや条件反射といっても過言ではない反応だった。

「ほら、あそこのビーチチェア」
 パラソルで日差しを遮り、ビーチチェアで悠々と寝ている我が幼馴染。
 ジュースを飲みながら海を満喫している姿は間違いなく春香だ。
「あれは…………他人だ」
「現実を見つめてくださいサー!!」
 わかってるよ、言ってみただけだ。現実を受け止めるのはもう慣れた。
 それでも逃避してみたくなってしまうのは何故なんだろうな?
「アイツ、またやってやがる」
「またって……まさか!!!」
 そのまさかだよ。お前もリゾランで見たんだからわかってんだろ?
 ええ、ナンパ狩りですよ。それも個人戦だからもっと性質が悪い。

「まだ俺達の存在に気付いてない。奴は自分で処理するつもりだろう」
「なんて奴だ。結城の上を行く外道さじゃねぇか」
「外から来るカモは春香のこと知らねぇからなぁ」
 恋人へステップアップする前に地べたに叩きつけられることになる。
 それは確定事項であり、避けられるかどうかは挑戦者次第だ。

「にしては被害者の姿が見えねぇな」
「ふっ……。え〜っと、そうだなぁ」
 健吾の見当違いな発言に鼻で笑いながら、ぐるりと砂浜を見渡してみる。
 春香の性格を考えながらちょうどよさそうなポイントを発見する。
「あっちの岩の裏だな。チラッと見てきてみろ」
「アイサー」
 曹長を偵察に送り込むと、俺はせかせかと仕事に戻った。


「少佐」
「被害を報告せよ」
「……三人」
 三人か、けっこう短時間で回してるようだな、恐ろしい話だ。
「ま、俺達には関係ねぇよ。仕事に集中しようぜ」
「雄二、本当に俺達に…いや! 俺に被害はないだろうな!?」
 俺に被害がいってもいいってのかよ? それはそれで酷くねぇか?

「察知されなきゃ無いだろ。来ても俺達は海の家の従業員だ」
「お前がそう言うならいいけどよ」
 そう何度も何度も春香に邪魔されてたまるかよ。されてるけどよ。
 俺達が下手に反応するより、普通に働いていた方が見つかりにくい。

「なんかあったの?」
「なんでもねぇよ。さ、仕事しようぜ」
 優子に知られるのはまずい。この店に被害を出すのはもっとまずい。
 この瞬間、俺の仕事に春香に姿を見られてはならないという制約が付いた。
(なんだこのスニーキングミッション……)
 まぁ、こそこそするつもりもないが緊張感は嫌でも高まる。
 あのまま寝転がってるだけの人間じゃないことは俺がよく知っている。
 アイツは退屈に耐えられなくなったら自ら動き出す女なのだ。



「雄二、井上が姿を消した」
「そうか。あまり気にするな」



「雄二、被害者が八人に増えてた」
「いちいち見に行くなよ。サボってねぇで仕事しろ」



「雄二……」
「今度は何だ!? 乱闘でも起きてたか!?」
「ご来店だ……」
 な、なんだこの暑い中に通ってくる冷たい氷のような気配は……。
 プレッシャー!? いや、違う!! これは殺気だっ!!!

「幼馴染の痛めもの一つ、雄二の奢りで」
「き、客席に行って待ってろ。ここは店の裏だ」
「ふ〜ん、承諾するんだ? 承っちゃうんだ?」
 あれ? 俺なんで春香にこんなに怒られてるんだろう?
 怒られた時点で理由なんてどうでもよくなるからすっかり忘れてた。

「ところで、なんで怒ってんだ?」
「こんな面白そうなこと、なんであたしを誘わなかった!?」
「午前中だったし、お前絶対起きてねぇだろ?」
「ぐ……午後からでも電話かけてくれりゃいいじゃん!」
「いちいち店長に採用確認面倒なんだよ。健吾の身にもなってみろ」
 こっちの言い分はすべて正論で、春香も言い返すことができないはずだ。

「…………」
「なんだよ。なんか言うことあるか?」
「うっっっっるっさい!!!!」
「ぐわっ!」
 思いっきり拳骨を食らって頭を抑える俺。絶対理不尽だ。
 俺なんか悪いことしたか? まったく思いつかないぞ。

「雄二がいないからナンパ狩りなんかやることになったんだぞ!!」
「お前嬉々としてやってたじゃねぇか!! 八人も潰しやがって!!」
「見てたんなら声くらいかけろ!!」
 店の裏で周囲の品々を巻き込むような格闘戦を繰り広げる。
「あたしも誘えっ!!」
「誘って欲しけりゃ朝早く起きてみやがれ!!」
「うるさい! うるさぁいっ!!」

「なにやってんの雄二君!!! それから貴女も!!!」
「「あ……」」
 優子さんが本気で怒りながらこちらを睨みつけている。
 我に返って周囲を見渡すと、そこら辺にある品という品が崩れていた。
「ご、ごめん。コイツにはよく言っとくし、ちゃんと働くから」
「もういい、クビ……」
「え!?」
「と言いたいところだけど人手が足りないからね」
 心臓に悪い。これだけやったんだ、弁償は洒落にならん位の額だぞ。
 ただ働きでもかまわないから頑張って労働力で返そう。

「貴女も、働きたいならお父さんに言っとくから働いて」
「ん……ごめん」
 春香もさすがに悪いと思ったのか、素直に謝っていた。
「貴女は接客担当! すぐに行って!」
「はいはい〜」
 パタパタと店に入っていく春香。残された俺と優子。

「なに? あの人は……」
「俺の幼馴染で井上春香。湊大付属の怪獣と呼ばれております」
「これはさすがに給料から引くからね! お母さんがなんと言っても!」
「わかってるよ。俺だってただで済まされる方が嫌だ」
 これだけやって許されたら申し訳なくて逆に罪悪感が増す。

「とにかく、頑張ってよね。期待してるんだから」
「ほんとごめん。それと……信じてくれてサンキュ」
「な、急に何言ってんの! ここの荷物ちゃんと元に戻しといてよね!!」
 カンカンになって店に戻っていく優子を見送り、俺は仕事に戻った。

「災難だったな」
「健吾! てめぇ、何処行ってやがった!!」
「仕事に決まってんだろ?」
「嘘つけ! 春香が来た途端に逃げやがって!!」
 気付いたら健吾の姿は見えなくなっていた。危険を察知して素早く逃げたのだ。
「まぁまぁ、俺も暇見つけて手伝うから」
 でも、健吾に被害に遭わなかったのは喜ぶべきことなんだろうな。
 俺も本気で責めてるわけじゃない。文句も冗談で言ってるだけだ。

「だけど……まぁ、井上を雇ったのが奴の最大のミスだな」
「なんでだよ?」
「俺はもうこの海の家の運命(さだめ)が見えた」
「そうか」
 それだけは絶対にない。今回はアイツも悪気を感じてるからな。
 健吾も春香が参加した時点で全部ぶっ壊れると決めつけてる感がある。
 あんまり否定できないが、そんなに悪い奴じゃねぇんだぜ?
(春香、お前いいのか? 本当のこと誰もわかってくれなくていいのかよ?)
 周りの人間の評価を見聞きするたびに、そんなことを思ったりする。



「片付け終わりました〜」
 店の裏を戻せる範囲で元に戻した俺は報告のため店に戻った。
 しかし、そこには優子一人。美智代さんの姿が何処にも見当たらない。
「美智代さんは?」
「一人増えたから大丈夫だろう、って私に任せて民宿に戻っちゃったわ」
「それって……大丈夫なのか?」
 高校生四人で海の家運営するなんて問題じゃないか?
「大丈夫。海の家のメニューくらいなら私でも作れるし」
 いや、調理担当の話じゃなく責任者の問題だと思うのだが……。

「春香さんも使えるみたいだし、大丈夫よ」
「そうか? ならいいけど……」
 俺の心配なんて所詮は素人の考えだし、ここは経験者に従っておこう。
「で、私が店長になったわけだけど、一つだけ注意事項ね」
「あ?」
「店内で暴力行為禁止!! これ以上壊したら承知しないからね!!!」
「……うい〜ッス」
 何度も何度もやったみたいに言うなよ……。俺達ゃ初犯だぜ?


「お、雄二。ご苦労さん」
「春香、接客の方は順調か?」
「順調順調! たまに入口で引き返しちゃう客とかもいるけどね」
 なんでだろう、と言わんばかりに首を傾げている春香。
 本気でわかっていないところが春香の春香たる所以なんだと思う。
(そいつら、地元の高校生だよ……)
 井上春香の顔を知らなくとも、特徴である茶色の長い尻尾はかなり有名だ。
 ここらの不良で知らない奴はモグリであるとすら言われている。
 湊市ではロングポニーに気をつけろ、が奴等の中では定着しているのだ。

 優子はそういうことをあまり知らないようで、俺としてはありがたかった。
 きっと俺達みたいな不良とは付き合いがまったくないのだろう。
「春香」
「ん?」
「えっと……なにがあっても暴力禁止だからな」
「わかってるわよ」
 俺は本当に言おうとしたことを隠し、何気ないことで誤魔化した。
 春香はこれでいい。俺が下手に口出ししない方がよっぽどいい。

「雄二君!! サボるなぁ!! 働けっ!!!」
「……凶暴な奴が店長になったな」
「逆らうとクビだよ? とんだ暴君ね」

「なんか言ったぁ!!?」
「「い〜え、なんにも」」
 確かに暴君誕生だ。実際クビにはされないだろうが恐怖だけは感じる。



 そして馬車馬のように働かされ、夕暮れが近づいてきた頃。
「あれ?」
「おお、優子。お疲れさん」
 優子が店を見渡し、不思議そうに首を傾げていた。
「お客さんが……いない」
「そりゃ夕暮れ時になりゃ客もいなくなるだろ」
 健吾が当たり前だろ、と言わんばかりに答える。
 時間が経つにつれどんどんと客が減り、俺達にも余裕ができ始めていた。
「にしてもゼロはおかしいわよ。例年から考えてもありえない」
「でも、来ねぇもんは来ねぇんだからしょうがないだろ?」
「海水浴客はまだいるでしょ?」
「ん……あぁ、いるな」
 もう海水浴には遅い時間だというのに遊んでいる奴らがいる。
 なんていうか……ずいぶんと若い奴が多い。がんばってるなぁ……。


「雄二〜、客来ない原因わかった〜」
 様子見のため外に出ていた春香が店に戻ってくる。
「原因?」
 その言い方、時間以外になんか原因があるってことだぞ?
「雄二、俺……なんか嫌な予感がしてきたぞ」
「気のせいだ」

「そこの死角のとこにさぁ、変なのがたむろってる〜」
「「やっぱりかい!!!」」
 俺だって予想はしてたんだよ。人の気配もなんか消えないしさ。
 けど、殺気は俺に向けられてねぇから放っておいたのに……。
「あれってなんなのかなぁ?」
 この女、全部知ってるくせになんてわざとらしい演技だ。
 どうせこの店に入らないように客にガンつけて威嚇してんだろ?

「んじゃ、聞くぞ。身に覚えのある人〜?」
「「「 ………… 」」」

「「お前だろうが!! 手ぇ挙げろボケ!!!」」
 俺と健吾が同じタイミング、同じ言葉で春香にツッコミを入れた。
「ねぇ、雄二君。なにが起こってるわけ?」
「いや……チンピラが番犬やってて客が店に入れないんだ」
「なにそれ!! 文句言ってやるわ!!!」
 息巻いて店の外に出ようとする優子の手を掴んで止める。

「ちょっと! 離してよ!」
「待てよ。この店の従業員は暴力禁止じゃなかったのか?」
「文句言ってくるだけよ! 離してっ」
 優子は俺の手を振りほどこうとするが、そんな力に負けるような俺ではない。
 どうすることもできなくなった優子は俺を睨みつける。
「文句で済む相手じゃねぇことくらいわかってるだろ……」
「…………」
 こういうマジな空気のときには健吾も春香も黙っていてくれる。
 俺がどんなことを言おうとしているのかを察してくれているのが嬉しかった。

「なぁ、優子。俺達に命令してくんねぇか?」
「命令?」
「俺達はお前の下で働く従業員だ。暴力禁止って言われりゃ絶対やらねぇ」
 どんな形であれ一度従うと決めたのだ。バイトが終わるまでは素直に従うさ。
 たとえ相手が俺達に殴りかかってきても絶対に反撃はしない。
「逆に命令されりゃバイトの範囲内でできることはやってやる」
「雄二君……」


「だから命令してくれよ。『店を守れ』って俺達に言ってくれ。
お前が言ってくれれば俺達が全力でお前とこの海の家を守ってみせる」


「でも、そんなこと……」
「頼むよ。俺達を信じてくれ」
 それがないと俺達は動けないんだ。俺達はもうやる気十分なんだよ。
 だから言ってくれ!! お前の一言があればこの店を守るために闘えるんだ!!
 






「……店長命令。やっちゃいなさい」
「サンキュ」
 数分の沈黙の後、優子ははっきりと俺達に出撃命令を下してくれた。
 無理矢理命令させちまったことに罪悪感を感じながら振り返る。

「いけるか?」
「もち」
「準備運動なら終わってんぞ」
 やっぱり春香も健吾も俺がやる気なのを悟ってくれていた。
 他の手なんてありえない、としっかりと準備を整えていたのだ。

「やるぞ。店と優子には一切手ぇ出させんな」
「「了解」」

「「「 さぁ、戦闘(ゲーム)の始まりだ…… 」」」

 俺達は恐怖など微塵も感じることなく堂々と店を後にした。
「おい、お前ぇら。邪魔だから消えてくれねぇか?」
「はぁ? 俺達はただ座ってるだけだぜ?」
「何が邪魔になんだよ?」
「どこに座ってようと俺達の勝手だろ? 法にも触れてねぇぜ」

「知ったこっちゃないネ」
「あぁ、お前ぇらぶん殴んのも俺達の勝手だからな」
「んだとオラァ!!」
「喧嘩売ってんのかコラァ!!!」

「「「 売ってんだよ!!! 」」」

 もともと俺達には交渉でどいてもらうつもりなんて毛頭ない。
 言葉のやり取りなんて戦闘を開始するための前口上でしかない。
 そして、それすらももう必要ない。あとは問答無用で闘るだけだ。
「8人かぁ……意外と少ないなぁ」
「残りは5人だけどな」
 俺達の最初の一撃で早くも一人ずつがノックダウンしていた。
「ん〜、あたしあと一人殺ったらやめとくわ」
「珍しいな。どうしたんだ?」
「この格好だからね〜。ちと恥ずいじゃん?」
 春香の格好は黄色のビキニで、そんな格好が戦闘に向いているわけがない。
 既に8人もナンパ狩りをやった人間の言うことじゃないと思うが……。
「んじゃ、あと一人はしっかり沈めとけよ」
「あんがと。どうも足技やりづらくって……」
 ったく、いらんこと言うなよな。集中力が乱れちまうじゃねぇか。

「俺達のノルマは二人な。確実に殺れよ?」
「わぁってるって」
 余裕で会話をこなせる程度、たいしたことのない相手だった。
「ぐ……俺達がブラッドレインって知っててやってんのか?」
「は? こいつら血の雨とか語ってますよ少佐殿」
「そりゃ血の雨降らせるほど殺してほしいんじゃないのか曹長」
 ブラッドレインね。湊市にあるでかい族の一つじゃねぇか。
 この際、本拠地でも根こそぎ潰しておいたほうがいいかもな。

「じゃあその血雨のトップに言っといてくれるか?」
 いったん言葉を切り、回し蹴りで相手の顔面に踵を蹴り飛ばす。
「てめぇが来い、ってな」
 ノルマの二人達成。健吾もどうやら自分のノルマを達成したようだ。


「アンタ達……何者なの?」
「ん〜、ただの高校生だよ。湊大付属のな」
「そうそう、俺達善良な一般市民」
「ちょっと格闘が得意な女の子ってとこかなぁ」

「善良な一般市民が8人の不良瞬殺できるわけないでしょ?」
「んじゃ、海の家の従業員ってことで」
「まったく……私も随分な従業員を抱えたもんだわ」
 素直に喜べないようで、優子は終始苦笑いだった。


 その後、あの海の家に不良が集まることはなくなった。
 そして俺のところに暴走族のトップが挑んでくるようなこともない。
 なぜなら、数日後……

 湊市でも有名な暴走族ブラッドレインは何者かの手によって消滅したからだ。



あとがき
というわけで4周年記念の番外編でした。
え〜、時系列の関係上、夏休み中の話となりました。
当初の予定では1/3くらいのものの予定だったんですけどねぇ……
意外に伸びてリオラート6話分の長さになっちゃいました。

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