俺はとんでもない事件に巻き込まれてしまった。 この事件は2年B組を崩壊に導いてしまうかもしれないほどのものだ。 そして、その原因はわが親友の行動にあった……。 日曜の昼下がり、俺は駅前の商店街を歩いていた。 何もやることがなくぶらぶらしていただけだ。特に深い意味は無い。 ぼーっと歩いていたら喫茶店で寛ぐ雄二の姿を確認した。 「おっ」 これで今日の暇潰しは決まった。今日は雄二と遊ぼう。 「お〜い!! 雄……」 俺のセリフはそこでストップした。 雄二の座る向こう側に見知らぬ女性の姿を確認したからだ。 即座に向かいのコンビニに入って監視体勢に入る。 どうやら、知り合いのようだ。奴にナンパなんぞできん。 しかし、かなり親しげな様子だ……。 (おいおい、これまずいッスよ……) この現場を井上や斉藤が見たら明日の学校はどうなるのか分からない。 それに、雄二の身が危ない。 (お前はこの町で何やってんだよ。電車乗ってどっか行けよ!!) 雄二がこの町でデートなんて許される行為ではない。 本を盾にしながら雄二たちの様子を伺う。 あんな女、見たことあったっけ? しばらく凝視してみるが、自分の記憶にはない。 「あのバカ……。自分が地雷地帯にいること分かってんのかよ……」 そのことに気付いていないだろう雄二はその女と笑って話している。 楽しそうにしやがって……。それに引き換え、なんで俺は見張ってんだよ。 もの凄く虚しくなってきた。 「ちくしょう、俺はなんていい奴なんだ……」 自分で自分を褒めてみた。 結果は、余計虚しくなっただけだった。 それから1時間、奴らは喫茶店に入り浸り、俺は立ち読みをする羽目になった。 喫茶店を出ても、雄二達は別れることなく、一緒にどこかへ行くようだった。 「やっぱり尾行するしかないよな……」 使い捨てカメラを買ってコンビニを出た。 (証拠を押さえておかねば……って証拠押さえたらまずいだろ!!) 金を使った一人ノリツッコミだった……。 だが、せっかく買ったのだ。雄二達の記念に撮ってあげよう。 記念に撮ってあげるのと、証拠を押さえるのとは違うのです。 見失わないように一定の距離をとって尾けていく。 「高…槻君?」 「ん?」 振り向いたとき、俺は固まった。凍ったと言った方がいい表現だろうか。 「何してるの?」 「お、おっす、斉藤」 斉藤有香だった。斉藤にこの事実を知られたらすべてがおじゃんだ。 幸い雄二達は斉藤の死角にいる。 「写真撮ってんだよ。町の風景とかな」 「ふぅん」 「ま、趣味みたいなもんだ」 「へぇ、意外……」 俺だって自分がこんな趣味持ってるなんて意外だよ!! (雄二、貴様が楽しんでる時になんで俺は修羅場ってんだよ!!) もうツッコミ所満載である。 「い、今からどこ行くんだ?」 「湊デパートだけど……」 それはダメだ。雄二の進行方向ではないか!! 「なんか買い物か?」 「……ウィンドウショッピングだけど」 よし、目的なしか!! なんとかなるかもしれん!! 「雄二探してんだけど知らねぇか?」 「え、藤木君?」 まず、第一段階。雄二の名前を出して気を引く。 「さっき商店街で見かけたんだけど見失っちまったんだ」 ここで真実を少々。 「俺はこっちを探すから、斉藤は商店街のほう探してくれないか」 俺が探すのは雄二の進行方向、斉藤は逆。 「うん、いいけど……」 よっしゃ!! 悪いな斉藤……だが、これもアンタの為なんだよ。 「頼んだぞ」 「でも、電話かけたらいいんじゃない?」 ぐあぁ、そこを突っ込むか……。 走っていこうかと思った矢先にとんでもないことを言われちまった。 「電源切ってるみたいで、繋がらねぇんだよ」 「そう、分かったわ。見つけたら電話するように言っておくね」 「ああ、頼む」 今度こそ本当に雄二を追いかけるために走った。 しかし、完全に見失ってしまっていた。 「チィッ!! どこ行った!!」 360度どこを見渡してもいやしねぇ。 街中を走り回り、雄二の姿を探し続ける。 (こうなったら写真の一枚は絶対に撮ってみせる!!) この苦労が報われないと、俺の気が済まない。 「お、健吾。なにやってんだ?」 怪獣だった。もとい、井上春香だった。 「雄二見なかったか?」 と、言ってから気づいた。 (コイツに聞いてどうすんだよ!! ダメじゃん!!) 自ら墓穴を掘ってしまった。 「雄二? 見てないねぇ」 むしろ見てたらこっちが困っとるわ!! 「そうか、じゃあな」 早急に確保し、周囲の防衛に務めなければ……。 「まぁ、待て。暇なのだ、雄二なんぞほっといて遊ぶぞ」 「…………」 (こっちはそれどころじゃねぇんだよ!!) 叫びだしたいのをぐっと堪えた。 「分かった、明日な、明日晴れたらな」 ダッシュで逃げ出した。捕まったら何をされるか分からん……。 見つけた……見つけたぞ。 湊デパート内にて目標を補足!! 現在一人の模様。 「おい、雄二……」 「ん、健吾じゃねぇか。どうした? そんなに疲れて」 お・ま・え・の・せ・い・だ・よ!! 「さっきの女は誰だ……」 「さっき?」 「喫茶店で茶ぁしばいとった女じゃ!!」 関西弁で突っ込んだ。 「なんだ、見たのか……」 「誰なんだよ!?」 こうなったらその女の正体だけでも掴まなくては……。 「風間さんだよ」 「風間?」 誰だ、そいつ? 「F組の女子。偶然一緒になったんでな……」 いつの間にそんな友人作ってんだよコイツは……。 「雄二、頼むからこの町で女と歩くな……」 「は? なんでだよ?」 (俺の気苦労が絶えないからだよ……) 俺がデパートのベンチに崩れ落ちたのだった。 |
あとがき 3万HITに驚き、急いで書いた作品です。 制作時間1時間。タイプしながら考えるという荒業を実行してしまいました。 何とか形になってませんか? |